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岩本健已の志高く腰低く声明るく

あなたの転機になった言葉は何ですか
~「セレンディピティ」に取りつかれた私~

岩本 健已
岩本 健已
株式会社想研 執行役員
2024.08.22
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あなたの転機になった言葉は何ですか<br />~「セレンディピティ」に取りつかれた私~

フィナシープロにコラムを掲載してから、号外を含め、今回で5回目になります。これからも継続して公開していく予定ですので、本コラムを通して、読者の皆さまにご理解いただきたい私の気持ちを申し上げます。それは、表題の「『志』高く『腰』低く『声』明るく」に示す通りです。このコラムが、お仕事の分野に関わりなく、皆さまがビジネスパーソンとして社会に貢献する活動を続けるうえでのヒントになればとの思いからです。

さて、先月(2024年7月)24日早朝、日経新聞の朝刊を広げると、私はある一面広告にくぎ付けになりました。それは、大手総合電機会社の広告でした。広告はほとんど白地で、中央に「Serendie」の文字。「Serendie」について、偶然から生まれるひらめきを意味する「Serendipity」と「Digital Engineering」を掛け合わせた新しい言葉。との説明がなされていました。

人生で偶然に幸運に出会うという「セレンディピティ」については、これまでメールマガジンのコラムでも採り上げてまいりました。そもそも私がこの「セレンディピティ」という言葉に出会ったのは、今から26年前、1998年のことです。私は当時、12月の銀行での投資信託窓口販売解禁に向け、準備に明け暮れていました。準備のなかでもとりわけ重要な活動は、投資信託販売に全く経験のない営業店のお客さま担当者への啓発活動でした。そこで、投資信託販売の経験者を証券会社から募り、リーダーとしてほぼ毎日、営業店での指導・教育を担ってもらっていました。

一方で週末(金曜日)の午後は本部の準備室に集合し、当該週の報告と翌週以降の課題等を認識する時間としました。また、私はリーダーとのコミュニケーションの一環として、必ず「今週の一言」を準備していました。多くのリーダーから「毎日アウトプットし続けるがインプットがない。このままでは、干上がってしまう。」という悲鳴が上がっていたからでした。

ある日の「今週の一言」で、私は後にノーベル化学賞を受賞された野依良治先生(当時は名古屋大学教授)のご講話の記事で印象に残った言葉「セレンディピティ」を引き合いに出して話をしました。化学の世界では実験を重ねる中で思いもよらぬ結果を出す…などの話でした。するとある一人のリーダーから「それはまさに営業に通じる話。既に本を読んでいるので、持ってきます。」と反応がありました。それは科学史研究家の澤泉重一氏が著された「偶然がもたらすモノ作り」と題する書籍でした。爾来、私は時間を捻出しては本屋巡りをし、「セレンディピティ」に関わる本探しをしました。この「セレンディピティ」はそれから後の私の職業人人生を支えることになったのです。

先日、自宅本棚の裏から山積みにしていた「岩本ノート」と自称する20冊ほどの備忘録が出てきました。その20冊のなかで、サブタイトルが「学びのもと」と記載してある備忘録を広げました。中を読み進めると、「セレンディピティ」に関わる各界の識者の切り抜きコピーが並んでいます。

例えば、今年6月の日経新聞「私の履歴書」を書かれた本庶佑先生が尊敬されていた医学者の早石修先生もそのお一人です。早石先生は2006年3月に「私の履歴書」を書かれましたが、最後の日3月31日の副題はそのものずばり「セレンディピティ」でした。「好きな物語がある。五世紀からペルシャに伝わる『セレンディプの三人の王子』というおとぎ話だ。」で始まっています。

2006年の5月には、長野県の寒天メーカーとして有名な伊那食品工業会長の塚越寛氏が日経新聞「人間発見」のコーナーで、新商品は偶然の結果から生まれることが多いとし、社内研究室に「SERENDIPITY(セレンディピティ)」と書いた額を掲げているとおっしゃっていました。

化学者やメーカーのトップだけでなく、作家の阿刀田高氏は「セレンディピティ」が読書に影響する。と。また、放送作家・脚本家の小山薫堂氏は「セレンディピティ」を好きな言葉であり、日常にあふれていると応えられています。脳科学者の茂木健一郎氏は「偶然の出来事自体は、コントロールすることはできない。しかし、偶然の出会いを生かすよう心がけることはできる。セレンディピティは、鍛えることのできる能力」としています。まさに忘れていた備忘録の発見があり、皆さまに本日コラムをお届けすることができました。

そこで、最後に私なりに会得した「セレンディピティ」に出会う「カギ」を5点お伝えいたします。

まず、1点目のカギは「好奇心」です。自分の専門分野外にも視野を広げ関心を持つことで、キャリアの機会が増えるのではないでしょうか。

2点目は「粘り強さ」です。最初はうまくいかなくても、あきらめずに続けるなかで、偶然の出来事や出会いが起こり、新たな展開の可能性を生むのではないでしょうか。

3点目は「柔軟性」です。状況は常に変化するものです。一度決めたことでも、状況に応じて対応を見直すことが大事ではないでしょうか。

4点目は「楽観性」です。意にそぐわないことも、ポジティブに捉えることではないでしょうか。きっとキャリアが広がります。

最後5点目のカギは「リスクテイク」です。未知なることにチャレンジすれば、失敗やうまくいかないことも起きます。しかし、積極的にリスクを取ることでチャンスを得られます。実行しなければ、何も起きません。ノーリスク・ノーリターンです。このコラムに皆さまの「セレンディピティ」が潜んでいれば、これ以上嬉しいことはありません。

フィナシープロにコラムを掲載してから、号外を含め、今回で5回目になります。これからも継続して公開していく予定ですので、本コラムを通して、読者の皆さまにご理解いただきたい私の気持ちを申し上げます。それは、表題の「『志』高く『腰』低く『声』明るく」に示す通りです。このコラムが、お仕事の分野に関わりなく、皆さまがビジネスパーソンとして社会に貢献する活動を続けるうえでのヒントになればとの思いからです。

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著者情報

岩本 健已
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株式会社想研 執行役員
1953年(昭和28年)生まれ71歳。銀行・証券会社・資産運用会社と金融業界一筋から、2023年に金融メディアの(株)想研に入社。銀行系投資顧問会社設立メンバー(1985年)、銀行の投信窓販解禁準備責任者(1997年)などを務める。全国地方銀行協会主催の新任支店長研修で3年連続講師。約60の銀行に対し、約500回、延べ約2万人に研修を実施する。趣味はアイスホッケーで71歳の現役選手(GK)。北海道苫小牧市の「王子製紙nepiaリンク」にアイスホッケー関連書籍300冊超とパネル等を寄贈。ビジネス信条は「信頼と継続」。著書「『志』高く『腰』低く『声』明るく」(地域金融研究所)
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