コロナ禍以前の話になりますが、アドバイザー研修のたびに、何度もいただいた質問がありました。「岩本さんがアドバイザービジネスでモットーとしていることは何ですか?」
私は決まって、こう答えました。「ワクワク・コツコツ・トントンです。何もパンダの名前を叫んでいるのではありません。ワクワクは幼稚園の頃の遠足の前の晩の気持ちを思いだそう。コツコツはこれほど地味な仕事はないので粘り強く継続して取り組もう。トントンはドアノックの音です。すなわち、何はともあれお客さま訪問をしよう。という姿勢をあらわしたものです」と。
コロナ禍は対面営業から非対面営業、オンライン営業へのシフトを加速しました。もはや、お客さまのご自宅を訪問しなくとも、オンラインで効率よく面談できる時代になりました。
その後、コロナ禍は収まりましたが、オンライン面談は定着しました。しかし、私は少なくとも初対面、あるいはお客さまが望む限りは、アドバイザーはドアノックするべきと考えます。対面営業は、お客さまの心とアドバイザーの心が重なり合う「リレーションシップ」をもたらすものと思うからです。
ところで、先日BS放送で米国の大統領選挙に関する番組を視聴していたところ、私にとって意外な事実を知りました。米国の選挙の基本はいわゆる泥くさい「ドブ板選挙」だというのです。てっきり、盛大に資金を集め、知略の限りをつくしたマーケティング戦術が展開されているものと思っていましたが、それは表面上のことにすぎないそうです。
まもなく、日米で大きな選挙が行われます。まず今月27日は日本で第50回衆議院議員総選挙の投開票。来月5日は米国で4年に一度の大統領選挙が行われます。選挙制度が異なるので一概に比較ができないことは承知の上で、あえて比べてみることにします。
日本は公職選挙法138条で、選挙運動における戸別訪問を禁止しています。個々の家を訪問する行為を禁止しても、選挙運動や意見表明の自由を侵害することにはならないと解釈されています。一方で米国の選挙は戸別訪問が認められ、選挙戦が終盤に入ると特に重要視されているようです。今回の選挙でいえば、民主党のハリス陣営も共和党のトランプ陣営も、大接戦が予想される中、自らの支持者を戸別訪問し「投票に行こう」と働きかけに懸命です。
我が国でも、かつての選挙運動では、候補者や運動員が有権者の民家を一軒一軒回り、支持を訴えました。各家の前に張り巡らされた側溝(ドブ)をふさぐ板を渡り訪問したことを由来とした「ドブ板選挙」が行われていました。
足元、SNS 等の広がりは目覚ましいものがあり、選挙自体がドブ板を代表とする地上戦からSNSをはじめとするネット全盛の空中戦の様相を呈しています。選挙ではありませんが、俗に、地道な活動、ドブ板を踏むように路地裏までくまなく歩いて行う営業をドブ板営業と呼んだりします。何やら非効率な前時代的な響きでありますが、アドバイザービジネスもロボットの登場を歓迎し、それで満足されるお客さまもいらっしゃれば、アドバイザーから直接助言を受けることを期待されているお客さまもいらっしゃいます。
8月8日のコラムでもご紹介した、米国エドワード・ジョーンズ社のゴルフボールの話ではありませんが、訪問の効果はまんざら捨てたものではありません。ドブ板営業と呼ぶかはさておき、アドバイザービジネスにおいてもドブ板の訪問対面営業は残っていくだろうと私は予測します。
それではみなさん、日本の将来のために清き一票を!