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【文月つむぎ】長期・積立・分散投資の認知度、若者ほど低い現状を憂う 
日証協の全国調査を読み解く

文月つむぎ
文月つむぎ
2024.10.24
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【文月つむぎ】長期・積立・分散投資の認知度、若者ほど低い現状を憂う <br />日証協の全国調査を読み解く

 

10月15日、日証協が「証券投資に関する全国調査」の調査結果を公表した。全国の18歳以上の個人7,000名を対象として2024年6~7月に実施したもので、その調査内容は、金融商品や有価証券の保有実態のほか、証券投資に対する意識、証券投資教育の状況、証券会社との取引状況等となっている。日証協は3年ごとに同様の調査を行っており、過去の調査結果と比較した形でデータを公表している。

前回調査時(2021年6~7月)は、日経平均が29,000円程度、ドル円が110円程度であった。その後、基本的に株高・円安が続き、今回の調査は日経平均が42,000円、ドル円が161円と直近のピークを付けた時期に行われた。投資しやすい環境が続く中、2024年1月には新NISAがスタートしたこともあり、どの程度個人の証券投資への関心や意欲が高まったのか確認するうえで、うってつけの資料となっている。過去調査時よりも大きく変化しているデータや意外にも変化が見られないデータが見られたので、以下いくつかご紹介したい。

投信の割合が増えて公社債が減る

「有価証券の保有率(株式・投資信託・公社債のいずれかを保有する人の割合)」は24.1%で、種類別では株式が14.1%、投資信託が12.6%、公社債が2.3%となっている。アベノミクスがスタートした2012年時点では、それぞれ12.1%、7.7%、4.2%となっており、投資信託が顕著に伸びている。これは金融庁が安定的な資産形成のツールとして投資信託を推奨してきたことが背景にあるものと思われる。なお、日銀が今年3月に17年ぶりに政策金利を引き上げたこともあり、それなりに公社債の保有率が高まっているかと思われたが、前回調査(2021年)よりも0.2%増に留まっている。金利引き上げ後間もないほか、個人向け国債金利は5年物でも0.5%前後とパフォーマンスで株式や投資信託に見劣りすることもあり、伸びが今一つなのかもしれない。

 

 

「証券投資の必要性」については、「必要だと思う」との回答が前回調査の30.9%から42.6%へと大幅に増加している。また、「NISAの認知度」も前回調査の57.6%から77.9%へ大きく伸びている。これは、2019年に「老後2,000万円問題」が大きく報道された後、2020年からのコロナ禍で在宅時間が増え、老後資金の確保策を色々と考える中、世界的に株価が上昇したこともあり、証券投資の必要性を意識するとともに、その有効手段であるNISA制度への関心を深めた人々が増えたものと思われる。また、政府と金融業界が強力にタッグを組んで、NISA制度の普及に努めた結果でもあろう。

金融経済教育の課題が浮き彫りに

一方、「証券投資教育を受けたことがある」との回答は7.5%(前回比+1.1%)と微増に留まっている。成年年齢が18歳に引き下げられた2022年4月から、高校で金融教育が義務化され、家庭科の中で資産形成の授業がスタートしたこともあり、20代以下では11.1%と前回比+4.7%と伸びているが、40代~50代の働き盛りの年代では6~7%程度で前回調査時とあまり変化が無い。金融庁は企業型DCを導入している企業等における職場教育の充実・浸透に期待してきたが、残念ながら数字は動いていない。

では、基礎的な金融教育を受けない中、証券投資の必要性を意識している人々は何を情報源としているのか。今回の調査では、「証券投資に関する知識の習得方法」は「中立・公的機関の無料セミナーへの参加」が最上位を占めた。また、金融庁が7月6日に公表した「リスク性金融商品販売に係る顧客意識調査結果」によると、「資産運用に関する情報はどこから入手しているか」との質問に対する回答(複数回答可)として、「その他インターネット上の記事」が4割強を占め最多となっていた。そのあとに「金融機関のウェブサイト」、「テレビ・ラジオ」、「YouTube等の動画サイト」が3割~2割代で続き、「職場/学校」との回答はわずか2%程度に留まっている。

自分の好きなタイミングで手軽・気軽なツールを使って情報を入手している様子がうかがえるが、彼らが安定的な資産形成のための手法を正しく理解しているか気になるところだ。これに関し、今回の調査では「長期投資・積立投資・分散投資がリスクを減らすのに有効である」と認識している回答が19.5%と前回調査時よりも4.7%増加している。「聞いたことがあるが詳しくは知らない」との回答を含めると、30代~60代で半数前後を占めており、それなりに正しく知識を習得しているように見える。一方、20代以下は14.6%に留まっている。20代以下は、「SNSやインフルエンサーによるインターネット」を情報源とする割合が高い。視聴率稼ぎのために、過激な、あるいは偏った手法を唱える情報源に若者がアクセスする機会も増えているのではないかと懸念するところだ。

 

 

ちなみに、「証券会社との主な取引方法」の回答として、前回調査時よりも「店頭営業員との対面、店舗等への電話」が大きく減少(42.8%→34.0%)した一方、「インターネット取引」が大きく上昇した(50.2%→59.7%)。特に20代~40代は9割弱が「インターネット取引」となっているほか、50代で7割強、60代でも5割弱に達している。かように証券投資において、インターネットは情報ツールとしても取引ツールとしても極めて重要な位置を占めてきている。各証券会社において、インターネットからの情報発信の質を高めるとともに、使い勝手の良さを追求していくことが顧客本位の業務運営に欠かせないものとなっていると言えるだろう。

 

 

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著者情報

文月つむぎ
ふづきつむぎ
民官双方の立場より、長らく資産運用業界をウォッチ。現在、これまでの人脈・経験を生かし、個人の安定的な資産形成に向けた政府・当局や金融機関の取組みについて幅広く情報を収集・分析、コラム執筆などを通し、意見を具申。
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