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永田町・霞が関ウォッチャーのひとり言

自公過半数割れで「時の人」に? 玉木雄一郎氏が率いる国民民主党の財政・金融政策を精読する

文月つむぎ
文月つむぎ
2024.11.06
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自公過半数割れで「時の人」に? 玉木雄一郎氏が率いる国民民主党の財政・金融政策を精読する

国民民主党の躍進で政府・与党の政策はどうなる?

先日の衆院選で、自民、公明両党の当選議員数が合算で215人となり、定数の過半数(233人)を割る中、国民民主党が7人から28人へと大きく議席を増やし、石破政権の今後を左右するキャスティングボードを握る存在となっている。こうした中、自公は国民民主党と個々の政策ごとに連携する「部分連合」を目指すとの報道が流れている。

筆者は、今回の衆院選で国民民主党が掲げた公約のうち、「所得税の非課税枠を103万円から178万円に引き上げ」や、「消費税を実質賃金が持続的にプラスになるまで一律5%に引き下げ」は把握していたのだが、改めて同党の公約をじっくりと読んでみたところ、金融政策として以下の政策も並んでいることがわかった。(以下、各公約内の青字は筆者によるもの)

 

<国民民主党の公約>

【暗号資産を活用したトークン・エコノミーの支援】

  • Web3.0などNFTを生かした経済を推進するため、暗号資産に関する税制と規約を見直す 
  • 20%の申告分離課税、損失控除(3年間)の適用
  • 暗号資産の交換時には非課税
  • レバレッジ倍率を2倍から10倍に引き上げる
  • 暗号資産ETFの導入
  • 法定通貨である円を電子通貨化するとともに、地方自治体による地域経済活性化に資する暗号資産の発行を推進

 

【税制改革】

  • 法人課税、金融課税、富裕層課税も含め、財政の持続可能性を高める
  • 所得再分配機能回復の観点から、金融所得課税を強化
  • NISA等の非課税制度の拡充により、家計の金融資産形成を応援 

 

同党の暗号資産の活用策は、日本暗号資産取引業協会(JVCEA)や日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)が政府・当局に長らく要望してきた項目が網羅されており、彼らとしては大変心強いであろう。一方、金融業界としてより気になるのは、同党が家計の金融資産形成としてNISA等の非課税制度の拡充を掲げ、国民の安定的な資産形成の促進に配慮する傍ら、金融所得課税の強化を掲げ、富裕層に応分の負担を求めることとしているところだろう。

金融所得課税の強化は野党共通の公約

実は、暗号資産の活用や金融所得課税の強化は、以下の通り、言い回しは少々異なるが、立憲民主党や日本維新の会の公約にも含まれており、今後自公が各党と部分連合を目指す場合、これらの政策が実現する可能性も高まってきているように思う。

<立憲民主党の公約>

【税制】

  • NISAの拡充が実現した一方で、貯蓄ゼロ世帯の増加などを踏まえると、所得格差の拡大・固定化を是正する取り組みは依然として不十分。所得再分配機能を強化する観点から、金融所得課税について、当面は分離課税のまま超過累進税率を導入し、中長期的には総合課税化。
  • クラウドファンディングや暗号資産への課税の在り方について、さらに検討。

 

<日本維新の会の公約>

【税制改革】

  • 高額所得者ほど総所得に占める金融所得の割合が高く、所得税負担率に逆累進性が働いている現状を改善し、総合課税化とフラットタックス導入を含む税制改革により課税の適正化・格差是正を図る。

【金融政策】

  • 国際金融市場における競争力の確保の観点から、暗号資産税制の改正を行い、雑所得としての課税方式からキャピタルゲイン課税に改める。また、暗号資産を利用した資金決済分野の革新を後押しするとともに、ブロックチェーン技術の研究開発を進め、暗号資産の分野で世界をリードする先進国の立場を取り戻す。

 

特に金融所得課税については、立憲民主党と日本維新の会は税率引き上げに留まらず、総合課税化までも展望しており、より踏み込んだものとなっている。どの党も減税や保険料引き下げを掲げる中、その見合いとなる財源確保策として金融所得課税の強化に走っているのだろう。読者の皆様もご記憶かと思うが、自民党の岸田文雄氏も2021年の総裁選において、「1億円の壁」をキーワードに、高所得層の税負担が相対的に低い状況を是正すべく金融所得課税の強化を掲げていたが、首相就任直後に株式市場急落という「岸田ショック」を受け、断念した経緯がある。

一般的に、金融所得課税の強化は税収の確保のほか、高所得層と一般の納税者の間の税負担の公平性を高めるといった指摘をよく聞くところだ。また、世界的に富裕層への課税強化が進んでいることも推進派を後押ししている。他方、金融所得課税強化により、「成長資金が海外のタックスヘイブンに逃げてしまうのではないか」、あるいは、「投資意欲を委縮させ、株式市場の低迷や経済成長の阻害を引き起こすのではないか」といった懸念も聞こえてくる。

こうした中、NISA制度が拡充された現時点において、少なくとも中間層にとって金融所得課税強化は大した影響はないとの意見がある。また、NISA制度の利用者が増えるにつれ、株式市場に資金が集まり、市場が下支えされるとともに成長資金も順次供給されていくことが期待されるとの見方もある。それゆえ、NISA制度の更なる拡充・利便性の向上を図りつつ、金融所得課税をある程度強化するというパッケージ策であれば、多くの国民が受け入れる可能性はあるのかもしれない。

NISA制度の拡充・利便性向上については、筆者の知る限り、どの党からも否定的・消極的なコメントは出ていない。今後、金融所得課税の議論を再燃させるのであれば、必ず、NISAやiDeCoといった幅広い層の資産所得増加に資する制度のさらなる充実を同時並行で議論していただくよう、永田町の先生方にはお願いしたいところだ。

 

国民民主党の躍進で政府・与党の政策はどうなる?

先日の衆院選で、自民、公明両党の当選議員数が合算で215人となり、定数の過半数(233人)を割る中、国民民主党が7人から28人へと大きく議席を増やし、石破政権の今後を左右するキャスティングボードを握る存在となっている。こうした中、自公は国民民主党と個々の政策ごとに連携する「部分連合」を目指すとの報道が流れている。

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著者情報

文月つむぎ
ふづきつむぎ
民官双方の立場より、長らく資産運用業界をウォッチ。現在、これまでの人脈・経験を生かし、個人の安定的な資産形成に向けた政府・当局や金融機関の取組みについて幅広く情報を収集・分析、コラム執筆などを通し、意見を具申。
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