北海道民の暮らしを支える北洋銀行では、道民の皆さんにとって「気軽に相談できる地域金融機関」であるために、さまざまな取り組みを行っています。今回は、より「身近な存在」を示す一例として、同行が運営する公式Instagram「つみ活女子のきんゆう講座 by 北洋銀行」(https://www.instagram.com/hokuyobank_tsumikatsu/)について、リテール推進部 主任調査役 似内(にたない)亮介氏と本店コンサルティングプラザ チーフマネージャー 門間 理紗氏に話を聞きました。
――資産運用立国を目指し、国をあげての資産形成への取り組みが進む中で、北洋銀行では「つみ活女子のきんゆう講座 by 北洋銀行」という公式Instagramを、2022年11月から運営しています。実際に中身を拝見したところ、いわゆる「基本のき」と言いますか、投資初心者にとって非常に分かりやすい、柔らかい内容であるという印象を受けました。そもそもこの取り組みを始められたきっかけを伺えますか。
似内 Instagramを検討し始めた当初は、当行としての公式SNSはLINEしか持っていませんでした。公式のLINEも発信内容はキャンペーン告知など、一方的な宣伝系の内容が中心で、われわれとしてはもっとライトに発信できて、可能であればお客さまと当行の双方向でコミュニケーションが取れるようなチャネルを持ちたいと思っていました。
部署をまたいだ有志で集まっていろいろとアイデア出しをする中で、次にSNSチャネルを追加するならInstagramが良いね、という話になったのが構想の始まりです。
――構想当初は、どのような人員体制だったのでしょう。
門間
当行ではリテールに関連する部署が4つ(リテール推進部、アドバイザリー部、デジタル・マーケティング部、ローン統括部)あるのですが、この4部署の有志で定期的に若手5人くらいが集まって、さまざまな企画のブレストをしていました。
銀行という組織はどうしても縦割りになりがちなところがあります。そんななか、若手で横串を通すような動きをしたいという希望から、勝手に始めた取り組みだったのですが、そのブレストから生まれてきたアイデアでした。
「担い手が少ない状態で始めるとしたら」とアイデアを詰めていくなかで、最終的にはテーマを「資産形成」に絞った方が良いという結論に至り、資産形成全般を所管するアドバイザリー部と、広告宣伝を所管するリテール推進部の共同運営という形で立ち上げました。
女性だけではなく資産形成層全般に発信「つみ活女子による金融講座」
――若手の皆さんが中心となってスタートした取り組みだったのですね。その内容はどのようなものをお考えだったのでしょう? ネーミングからすると「女性向け」のように受け取れます。
門間 金融というテーマは、どうしても「重そう」「堅そう」というイメージをお持ちの方が多いと思います。われわれとしては、「金融」をもっと「身近で気軽なもの」として感じてほしいという気持ちがありました。だから名前は少しライトというか、身近な感じが出るようなネーミングにしたいと考えていました。
これは私の個人的な印象なのですが、日々お客さまと接し、交渉している担当者を見ていて、女性の方が貯蓄に対しての意識がそもそも高いのではないか、とずっと感じていました。今はだいぶ変わってきているかもしれませんが、家庭においても家計の管理を担っているのは女性が多いのではないでしょうか。そして、Instagramは女性のユーザーが多い印象がありましたので、女性に響く見栄えは意識したというところはあります。
ただ、ターゲットを女性に絞っているわけではないんです。アカウント名は、文字数などいろいろな制限があってこの形になりましたが、「つみ活女子」が意味するのは「女子のための」ではなく、北洋銀行で働く「つみ活女子による金融講座」という意味です。
――女性に限らず、広く資産形成を望まれる人に向けての情報発信ということなのですね。
似内 はい。北洋銀行では、積立投資活動のことを独自に「つみ活」と呼んでいます。NISAだけではなく、定期預金や保険など幅広い商品や、キャッシュレス決済の活用や支出の見直しなど、家計の管理も含めたさまざまな方法で資産形成に取り組みましょうということをご案内しています。「つみ活」は長い時間をかけた方が良いので、早期から取り組める若年層に届いてほしいという思いでSNS(Instagram)での発信が重要だという結論になりました。
――そうすると、フォロワーは若年層が多いのですか?
門間 実際のフォロワーは、40~50代の方々が最も多いです。北洋銀行の投信積立の成約状況を見ても、30代後半~50代前半くらいがコアな年代となっています。若年層にもアプローチはしているものの、実際に資産形成への本気度が増してくるというか、老後などを考えてその必要性を感じてくるのがその年代なのだと思います。
ただ、北海道は2022年の金融リテラシー調査で47都道府県中33位という結果から、リテラシーの底上げがとても重要だと考えています。ですからInstagramでは、若年層を含む幅広い世代に情報発信することで、北海道民のリテラシー向上に貢献しつつ、北洋銀行のファンを増やしていきたいと考えています。
――運営についてお伺いしたいのですが、更新作業が週1回以上のペースで行われています。それぞれ所属部署での業務もある中、どのように運営をされているのでしょうか。
似内 フィード投稿は月6回、ストーリー投稿は毎日行うことを目標としています。時期や情勢などを踏まえたネタ出しは主にアドバイザリー部(当時)の門間が、出来上がってきたラフなアイデアを投稿に落とし込むところを私が行う、という共同体制で運営しています。テーマによっては私が原稿作成したり、他部商品を取り扱う場合は所管部に協力を仰ぐこともありますが、基本的には門間と私の2人で内製化しています。
立ち上げに当たって情報収集をしていたころは、FPに寄稿してもらう形でパッケージ化するのは…など検討したのですが、お伝えした通り、有志によるスモールスタートでしたので、あまりコストを掛けられないという事情もあり、ネタ部分は自分たちで頑張ろうという結論になりました。画像で投稿するInstagramでは見た目も大事ですから、人物イラストの制作や挿絵などで見栄えを必要とする部分だけは外部の代理店にサポートしていただいています。
実は私たち2人は同期でして、その気安さもあってこれまで2人体制でやってきました。しかし、10月に門間が異動になり、会社員として今後も異動の可能性はあります。ここまで立ち上げたからにはしっかり続けていきたいので、この機会に属人的な運営ではなく、チームで運営できるように移行できればと考えています。
門間 2人体制で月6本という目標を達成するのはなかなかハードで、常に締め切りに追われているような状態でした。所属部署での業務が多忙になると、どうしてもInstagramの作業が後回しになり、どちらかに作業のしわ寄せが行ってしまうことも。そもそも当初は月間のスケジュールも決めず、感覚的に運営していたのですが、こういった経緯もあり、きちんと運営のルールを決めながら、徐々にルーティンを確立していきました。
同期だからこそ実現できた「理想の表現」。これからはチームで運営できる体制作りを目指す。
継続の力は「絶対に認められるコンテンツ」という自信と熱量
――Instagramを始めたことで、どのような成果がありましたか?
門間 定量的に成果を測ることは難しいのですが、営業店の担当者の声やお客さまとの取引記録の中には、「Instagramが好評だ」というものが増えてきていますので、一定の成果はあると思っています。また、Instagramのアカウントを使用して、過去の投稿を広告として配信することも可能となり、資産形成層へのリーチ拡大につながっているのではないかと考えています。クライアントや、他の金融機関から「見ています」、「フォローしています」といった声をいただくことも増えました。
公式Instagramではありますが、当行にはSNSの専門部署があるわけではなく、複数の部署をまたいだ非公式の動きをきっかけに立ち上げに至った珍しいケースです。この取り組みがきっかけになり、行内で今後このようなアイデアを形にする取り組みがどんどん増えていけば、それも成果の一つになるのではと思っています。
――有志でスタートし、2年間ほぼ2人で更新を継続することは、並大抵の努力ではなかったと思います。続けてこられた理由は?
門間 当初は本当に「Instagram運営をしてみたい」という興味からスタートしましたが、いろいろな反響をいただけるまでに育ってきました。個人的には、数年後に「絶対やっていて良かった」と言ってもらえるコンテンツだと信じてやってきた、その熱量でこれまで2年間頑張ってこられたと思います。
似内 SNSは、ともすると軽いものというか、遊んでいる風に見えなくもないですよね。われわれの発信内容もそうです。でも、継続するには遊び心を忘れないことも大切だと思っています。楽しむ気持ちがないと、ただ大変なだけになってしまいますから。
――それでは最後に、今回のSNSでの情報発信なども含めて、地域に根付く金融機関として今後必要と考える取り組みや展望について伺えますか。
門間 人生100年時代と言われていますが、そこを見据えた道民の皆さまの資産形成をサポートするということが、当行としての重要なミッションと考えています。時代やお客さまのニーズの変化に合わせて取り組むべきことはたくさんありますが、「気軽に相談できる地域金融機関」という強みは引き続き伸ばしていくべきだと思っています。私はいったん離脱しますが、Instagramも、そういった側面の表現の場として引き続きコツコツと取り組んでいければと考えています。
似内 多くの地域金融機関が同じ課題を持っていると思いますが、当行でも若年層とのつながり強化・取引拡大が重要課題のひとつとなっています。まだ金融リテラシーが未熟な若年層へのアプローチとして、ただ「取引しませんか」ではなく「なぜ必要なのか」という情報提供から入る形はマッチしているのではないかと考えています。だから、現在の「つみ活女子のきんゆう講座」はもちろんですが、できれば複数のチャネルで多様な情報発信をできるようにしていきたい、という夢を持っているところです。
――お2人の姿を見て、北洋銀行の若手行員の皆さんから「自分もやってみよう」と考える方が増えるような気がします。顧客のために熱量を持って取り組む地域金融機関・北洋銀行に、道民の皆さまも多くの信頼を寄せていることでしょう。今後も新たな取り組みを期待しています。本日はありがとうございました。