finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート
こたえてください支店長~投信窓販における顧客本位を実現するために~

「支店長! ご自身の新NISAはどこの金融機関で開設しますか。どんな商品を買いますか?」

森脇 ゆき
森脇 ゆき
フィデューシャリー・パートナーズ 代表
2023.12.20
会員限定
「支店長! ご自身の新NISAはどこの金融機関で開設しますか。どんな商品を買いますか?」

投信販売に徹底した顧客本位の姿勢が求められる中、現場からは戸惑いや不安の声
も聞かれます。若手、ベテランを問わず真のフィデューシャリー・デューティーを実現するにはどうすればいいでしょうか。これまで2000人以上のお客さまに「あなたのための」資産アドバイスを行ってきた株式会社フィデューシャリー・パートナーズの森脇ゆきさんが、皆さんのお悩みに答える連載、第2回目です。

Q:職員「支店長! ご自身の新NISAはどこの金融機関で開設しますか。どんな商品を買いますか?」

このような職員からの問いかけに、あなたならどのように答えますか。

A: 支店長「それは当然当社ですよ。購入商品はあなたに案内をしてもらってから決めようかな」

 

森脇's Answer:

対面金融機関だからできる
「そうではない人々に伴走する」という付加価値

マネジメント層である支店長の皆さんは、当然「自金融機関で開設する」と答えるでしょう。それは、支店に課されるNISA口座開設目標件数を達成するための営業協力だけが理由ではないはずです。経営者なら自社の提供する商品・サービスをよく知っておく必要があります。それは、取引先のさまざまな企業経営者と接してきた金融機関の支店長ならよくご存知だと思います。

ところで、恒久化され投資枠も拡大されたことでいよいよ重要度が高まるNISAですが、大手ネット証券で開設するのが有利であるという声が聞かれます。たしかに、取扱商品(証券会社では株式やETFの取り扱いがある)や投資信託の取扱商品数、そして利便性を比較すると、ネット証券で取引するのが優れた選択であるように思えます。では、対面金融機関がNISAを取り扱うことに意味はないのでしょうか。さらに言えば、投資商品を取り扱うこと自体に意味はないのでしょうか。

もちろんそうではありません。対面で販売することにどのような価値があるのか、私が出張中によく利用する定食屋の女将さんからいただいたヒントを紹介します。女将さんは電化製品を購入する際、古くから付き合いのある街の電気屋さんで購入するそうです。購入するのは家電量販店で販売されている製品であり、しかも価格設定は高いのですが、「困ったときにすぐ相談できる安心感があるのよね。それはお金の問題ではないのよ」とのこと。続けてこうも話していました。「私も食材が余っているとすぐ小鉢をサービスするのよ。それはお客さんに食べてもらいたいという気持ちでしかないの。それをコンサルしているというエライ人は、小鉢にも料金を設定しなきゃダメだと言うのだけど、商売において大切にしているものや目指しているものが違うのよね」。

この女将さんは、対面であることの価値、さらに言えばそこに価値を見出して利用したいと考えるお客さまがいることを教えてくれたのです。この女将さんのようなお客さまは、「手数料が安い」「金利が高い(安い)」「便利でオトク」というセールストークのみでは心が動かないことが想像できると思います。

では、投信販売を対面で行うことの価値とは、具体的には何なのでしょうか。そのためにまず資産形成・投資を成功させるために必要なことが何かを考えてみます。それはシンプルに言えば、「自分の投資目的に合う商品を購入すること」と「相場変動時(特に下落時)に解約しないこと」の二つに尽きます。自分の投資目的に合う商品とは、大まかに言って長期投資に適しており、お客さまが自分の意思を反映できるような商品です。そして、どのような商品でも価格変動するのですから、価格が下落した時に慌てて解約しないで投資を継続することが欠かせません。自ら書籍やウェブで情報収集して学習する意欲があり、なおかつ相場変動時にも動揺せずに投資を継続できる胆力のある人は、ネット証券等、非対面のチャネルで商品選定して投資するのが良いでしょう。選択肢も豊富ですし、その結果、手数料などのコストも低く抑えられます。しかし、世の中全ての人がそうではありません。むしろ、そのような人は少数派かもしれません。対面金融機関が相手にすべきなのは、決して少なくない「そうではない人々」ではないでしょうか。

インターネットの操作が苦手な人はもちろんですが、それ以外にも対面で投資商品の案内を受けたいと望むお客さまは多くいます。投資についてきちんと教えてほしい人、自分に合った商品を紹介してほしい人、商品についてしっかり説明を受けてから買いたい人……このような人々にアプローチするのが、対面金融機関の役割です。そして、私が特に重要だと考えているのが、長期投資の伴走をすることです。長期投資を継続していけるように、相場変動時にフォローすることの意味は極めて大きなものがあります。生涯にわたる長期投資をサポートし続けることは、担当者が代わっても組織としてずっとお付き合いしていく対面金融機関にしか生み出せない付加価値なのです。

自社サービスの利用は、知識の交換・交流と
課題抽出のチャンス

このように、投信販売において対面金融機関は潜在的に大きな存在意義を抱えています。それを十分に発揮して、お客さまに価値を提供するためには何をすべきでしょうか。それを知るためには、自金融機関・自店で提供されている商品・サービスを把握することが欠かせません。自金融機関でNISA口座を開設するのもその一環です。できればただ口座を開設するだけではなく、自店の職員による案内を受けて実際に商品を購入してみてください。上司にクロージングをするのは緊張するものですから、職員にはできるだけプレッシャーを感じさせないように工夫してください。私のかつての職場では、日頃から若手職員への教育のためにロールプレイングを実施していました。課内で声をかけ合い、見学するのが当り前の状態を作ります。お客さま役は、ある時は支店長、またある時は課長、あるいは新人、など変化をつけるとなお良いです。知識の交換や交流が日常化する取り組みを日頃から行うことが大切です。

実際に支店長自らが自社のサービスを利用することで、課題や対処策がきっと見えてくるはずです。職員の研修は足りているか、商品ラインアップに見直しの余地はないか、説明資料は充実しているか、など。千差万別のお客さまに対応し、価値を提供するための体制づくりに生かしてください。顧客本位とは、このようにして作り上げられた環境の上に実現されるものだと思うのです。

投信販売に徹底した顧客本位の姿勢が求められる中、現場からは戸惑いや不安の声
も聞かれます。若手、ベテランを問わず真のフィデューシャリー・デューティーを実現するにはどうすればいいでしょうか。これまで2000人以上のお客さまに「あなたのための」資産アドバイスを行ってきた株式会社フィデューシャリー・パートナーズの森脇ゆきさんが、皆さんのお悩みに答える連載、第2回目です。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1

関連キーワード

  • #フィデューシャリー・デューティー
  • #投信窓販
前の記事
「 私、投資信託を販売したくないです。辞めます……!」
2023.11.21
次の記事
「支店長! お客さま本位で考えれば、新NISAはネット証券の方が良いのではないでしょうか」
2024.01.26

この連載の記事一覧

こたえてください支店長~投信窓販における顧客本位を実現するために~

「支店長! 高齢者にリスク性商品を販売することは顧客本位から外れませんか?」

2025.10.17

「支店長!融資が第一とおっしゃいますが、投信販売は重要ではないのでしょうか。担当する私たちの仕事が軽視されているように感じます」

2025.09.19

「支店長! 同行訪問していただく際、緊張してうまく話せなくなってしまいます!」

2025.08.22

「支店長! 業績を上げるためにFP資格は必要ですか」

2025.07.18

「支店長! 一般職に投信のセールスをしろとおっしゃいますが、日常業務が忙しくてとても無理です!」

2025.06.20

「支店長! ゴールベースアプローチをすれば、お客さま本位の提案になるということでよいですか?」

2025.05.23

「支店長! 売れ筋の投資信託を3つ覚えて売れるようになりました。全ての商品を覚える必要はありますか?」

2025.04.25

「支店長が代わると方針や雰囲気が変化して戸惑います! 」

2025.03.21

「支店長! 本音が知りたいです! 顧客本位と成果(収益)のバランスをどのように考えていますか?」

2025.02.21

「支店長! 他の金融機関と比較して、投信の取扱商品が少ないので投資の案内がしにくいです!」

2025.01.24

おすすめの記事

毎月分配型解禁見送りと運用立国の「親離れ」――地銀は新強化プラン+口座付番義務化で”地域金融出先機関”に?
【オフ座談会vol.10:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】

finasee Pro 編集部

浜銀TT証券の売れ筋で存在感を増す「イノベーション・インサイト 世界株式戦略ファンド」、「世界の実物資産中心」も好成績

finasee Pro 編集部

現状の貸倒引当金の問題点

岡本 修

⑪役員退職金の考え方(税法)【動画つき】

木下 勇人

八十二銀行で「ゴールド・ファンド」が売れ筋トップ、国内株上昇で「ひふみプラス」もランクイン

finasee Pro 編集部

著者情報

森脇 ゆき
もりわき ゆき
フィデューシャリー・パートナーズ 代表
信用金庫の預金業務担当を経て信託銀行に勤務、個人向け資産アドバイスを担当。担当総顧客数は約2000人、不動産・相続相談を含む総合的な資産アドバイスを経験する。深く学ぶにつれて、働く意義、社会貢献、自分にとっての良い仕事とお客さまの最善の利益を追 求するため、独立を決意。2018年、フィデューシャリー・パートナーズを設立。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
【金融風土記】東日本大震災からまもなく15年、福島の金融勢力図を読む
足利銀行の売れ筋にみる「コア・サテライト」の投資戦略、新たな「コア」が期待されるファンドも登場
八十二銀行で「ゴールド・ファンド」が売れ筋トップ、国内株上昇で「ひふみプラス」もランクイン
【連載】こたえてください森脇さん
⑬若手の職員への教育が不足。効果的な方法は?
【運用会社ランキングVol.1】販売会社が運用会社に求めるものは、運用力か人的支援か? 2025年の評価を発表!
毎月分配型解禁見送りと運用立国の「親離れ」――地銀は新強化プラン+口座付番義務化で”地域金融出先機関”に?
【オフ座談会vol.10:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】
【運用会社ランキングVol.2/販売会社一般編①】銀行・証券会社からの評価トップは2年連続でアモーヴァ・アセットマネジメント、新NISA2年目で変転期の投信市場が求める運用会社は?
マン・グループの洞察シリーズ⑫
金に投資する意味とは何か
三菱UFJ銀行の売れ筋トップに「日経225」、圧倒的なパフォーマンスのアクティブファンドは?
広島銀行の売れ筋に見えるアクティブファンドの魅力、「ラップ型ファンド」にも評価が高まる
【運用会社ランキングVol.1】販売会社が運用会社に求めるものは、運用力か人的支援か? 2025年の評価を発表!
【金融風土記】東日本大震災からまもなく15年、福島の金融勢力図を読む
長野市vs松本市"不仲説"を乗り越え統合の八十二銀・長野銀が、「もう取引しない」と立腹の取引先と雪解けに至るまで
足利銀行の売れ筋にみる「コア・サテライト」の投資戦略、新たな「コア」が期待されるファンドも登場
【運用会社ランキングVol.2/販売会社一般編①】銀行・証券会社からの評価トップは2年連続でアモーヴァ・アセットマネジメント、新NISA2年目で変転期の投信市場が求める運用会社は?
西日本シティ銀行の売れ筋ランクアップファンドに価格変動の洗礼、価格波乱なく堅調に推移するファンドとは?
【連載】こたえてください森脇さん
⑬若手の職員への教育が不足。効果的な方法は?
【連載】こたえてください森脇さん
⑫元本保証でない商品の販売を嫌がる職員への働きかけ
広島銀行の売れ筋に見えるアクティブファンドの魅力、「ラップ型ファンド」にも評価が高まる
三井住友銀行の売れ筋でランクアップしたファンドは? ランクインした「ライフ・ジャーニー」は期待以上のリターン
【新連載】プロダクトガバナンス実践ガイド~製販情報連携の背景と事例
①プロダクトガバナンスが注目される背景と製販情報連携の重要性
【連載】こたえてください森脇さん
⑩役席者には収益目標、現場には残高目標。両方を達成するには?
【連載】こたえてください森脇さん
⑪預かり資産業務に対するマネジメント層の理解が低い
投資信託の「運用損益」プラス顧客率ランキング 
銀行、証券会社以外の選択肢とは?【IFA編】
【みさき透】高市内閣で「運用立国」から「投資立国」へのシフトが加速へ
【運用会社ランキングVol.1】販売会社が運用会社に求めるものは、運用力か人的支援か? 2025年の評価を発表!
【金融風土記】東日本大震災からまもなく15年、福島の金融勢力図を読む
ファンドモニタリングは、どの指標を参照すればいいか
(3)アクティブファンドのモニタリング② α(アルファ)値とβ(ベータ)値
【文月つむぎ】証券口座乗っ取り被害ゼロへ 金融庁の新監督指針を読み解く
銀行・保険会社による暗号資産解禁案、金融庁がにじませた「躊躇」を指摘する声も。その理由とは…?
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2025 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら