finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート
こたえてください支店長~投信窓販における顧客本位を実現するために~

「支店長! 投資信託の購入金額がNISAの枠内になってしまい、大口での契約が取りにくいです」

森脇 ゆき
森脇 ゆき
フィデューシャリー・パートナーズ 代表
2024.10.25
会員限定
「支店長! 投資信託の購入金額がNISAの枠内になってしまい、大口での契約が取りにくいです」

投信販売に徹底した顧客本位の姿勢が求められる中、現場からは戸惑いや不安の声も聞かれます。若手、ベテランを問わず真のフィデューシャリー・デューティーを実現するにはどうすればいいでしょうか。これまで2000人以上のお客さまに「あなたのための」資産アドバイスを行ってきた株式会社フィデューシャリー・パートナーズの森脇ゆきさんが、皆さんのお悩みに答える連載、第12回目です。

Q:職員「支店長! 投資信託の購入金額がNISAの枠内になってしまい、大口での契約が取りにくいです」

A: 支店長「なるほど、その気持ち良く分かりますよ。ところでそのお客さまの投資目的は何ですか。資産額はどのくらいですか」

 

森脇's Answer:

NISAに注力しているとありがちなお悩みですね。このような思考に陥ってしまった際には、NISAにとらわれすぎていることに気がついてほしいと思います。

投資をする上でNISA利用はぜひ検討すべきですが、それを前提にした提案になってしまってはいないでしょうか。ひとまずNISAのことは脇に置いて、投資の提案をすることについて改めて考えてみましょう。

目の前の金融資産を見るのではなく、「お客さまを知る」

投資の提案をする上でまずやるべきことは、お客さまを知ることです。ここでは投資の目的と資産背景に着目した例で考えてみましょう。

満期を迎えた500万円の定期預金を保有する二人のお客さま(AさまとBさま)がいます。提案の結果、どちらのお客さまにも、当金融機関でNISA口座を開設していただき、成長投資枠にて240万円の投資信託一括購入を受託しました。担当者は「NISAの枠に収まってしまった、もっと大きな契約になったのではないか。そのためにはどのような提案をしたらよいのか」と思案します。まさに今回の質問の通りです。

Aさまは、老後の資産形成のための手段として運用を考えているとします。そして、保有している金融資産は、当該の定期預金500万円でほぼ全てだとしましょう。NISAの成長投資枠で240万円を一括投資しましたが、資産全体のバランスから考えると多過ぎるかもしれません。より少額での投資を提案することも考えられたはずです。総資産のうちかなりの割合を一括投資した場合、相場が下落した際に追加購入する余裕資金が不足することになります。しかも、投資に不慣れなお客さまの場合、全財産に比して大きな割合の含み損を抱えることに耐えられなくなり、解約して損失確定してしまうパターンはとても多いのです。そして投資から手を引いて二度と戻ってこなかったり、あるいは自金融機関との取引を打ち切りにする可能性もあります。より適切な金額を(今回の場合はもっと少額で)投資すれば、下落時の傷は浅く追加購入の余裕も生まれ、自金融機関との取引は将来にわたり拡大していく可能性が高いでしょう。

一方、Bさまの金融資産の総額は5000万円以上で、投資目的は余裕資金の資産活用だとします。投資信託へ配分する資金として2000万円ほどが良いという結論に至った場合、NISAの枠を超えた契約は当然ありえます。

以上の例で分かる通り、NISAの枠いっぱいだと、Aさまはリスクを取り過ぎで、Bさまは少なすぎます。なぜこのようなことが起こるのかと言えば、前述した通りNISAにとらわれすぎているからにほかなりません。裏を返せば、お客さまの状況やご意向をもとに考えていけば、冒頭の質問のような悩みは起こらないのです。

NISAは投資のための手段に過ぎない

筆者がお客さまに対して繰り返し伝えてきたこと、そして金融機関職員の皆さんへの研修でもよく話すことがあります。それは「すべての金融商品について、税制優遇を契約の目的にしないでください」ということです。NISAもiDeCoも税制優遇のある有利な制度ですが、それらは手段に過ぎません。資産形成をする必要があるのであれば、これらの制度がなかったとしてもやるべきことに変わりはありません。そして、制度というものは変更される可能性があります。本来の目的を見失わなければ、あてにしていた優遇が受けられないことをそれほど嘆くこともありません。

目的はあくまでも投資・資産運用であって、NISAはそのための手段です。大切なのは何のために投資をするのかを確認することです。投資商品の契約時に自分の目的をしっかりと確認できたお客さまは相場変動に強く、長期投資を成功させる可能性が高いと思われます。

支店としてお客さま情報を把握する

NISAは、投資をするなら積極的に利用を提案すべき制度であることは間違いありません。国民の関心度も高いでしょう。そのため、お客さまに投資への興味を持ってもらうための入り口としてNISAを案内するのは有効です。ただし、NISAは手段に過ぎないことを意識しておきたいのです。

お客さまが他社でNISA口座を開設済みの場合、そのこともお客さま情報としてしっかり保管しておきます。できれば、その運用状況もヒアリングしておきたいところです。そして時折、状況に変化がないかを確認してみましょう。自金融機関での預り資産と他社での運用状況を併せて考慮できれば、お客さまにより良い提案ができるはずです。

支店長には、職員の営業活動を観察するにあたって、販売額や契約件数などの数字のみに注目するのではなく、精度の高い顧客情報から提案ができているのか確認してほしいと思います。お客さまとリレーションが十分に取れている職員は、契約の動機や購入金額決定の理由について、お客さまの情報を十分に伝えてくるはずです。一方、営業成績は良いけれど、契約の動機や金額決定の理由についての説明が画一的だったり、曖昧だったりする職員もいます。もしかすると顧客本位とは言い難い販売活動を行なっているかもしれません。支店全体の業績に責任を負う支店長からすると、何はともあれ目先の収益を上げる職員を評価したくなるかもしれません。しかし、大切なことはその活動の内実であり、きちんとお客さまに向き合い提案する活動を評価することであり、支店全体で顧客本位を実践する道筋をつけることです。

顧客本位の活動の第一歩はお客さまを知ることです。担当者一人ひとりがお客さま情報をしっかり把握できていれば、支店としても目標の数字は立てやすいはずです。支店長は、職員が取得したお客さま情報を集約することで、自店の活動の余地をある程度正確に把握することができるでしょう。ほとんど芋の埋まっていない土地で「10本の芋を掘れ」という命令には無理があるように、お客さま情報を把握しないまま出される指示は、労多くして功少なしという結果に終わるばかりか、職員の疲弊や士気低下も招きます。本来の目的を見失ったNISAへのとらわれも、このような過程で生じるのではないでしょうか。各業務に対する適切な目標設定やリソース配分を采配するためには、精度の高い情報の収集と管理が不可欠です。まずは自店のお客さまのNISA開設・運用状況について把握するところから始めてみてはいかがでしょうか。

Q:職員「支店長! 投資信託の購入金額がNISAの枠内になってしまい、大口での契約が取りにくいです」

A: 支店長「なるほど、その気持ち良く分かりますよ。ところでそのお客さまの投資目的は何ですか。資産額はどのくらいですか」

 

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
1

関連キーワード

  • #フィデューシャリー・デューティー
  • #投信窓販
前の記事
「支店長! 投資信託の定時定額購入はお客さま本位の提案だと思うのですが、一括購入は違うと思いませんか?」
2024.09.20
次の記事
「支店長! 60 歳男性に対して投資信託の商品は何を提案するのが正解ですか?」
2024.11.22

この連載の記事一覧

こたえてください支店長~投信窓販における顧客本位を実現するために~

「支店長! 今の時代、対面の営業はネット取引ができないお客さまのためにあるのですよね? であれば、いずれこの仕事はなくなりますよね?」

2026.08.21

「支店長! お客さまとの雑談が大切とおっしゃいますが、何を話していいかわかりません。時間もありません!」

2026.07.17

「支店長! 接客について、先輩方のように自信が持てません。どうしたら自信が持てるようになりますか」

2026.06.19

「支店長! 研修は受けたのですが、投信をセールスできる気がしません。慣れるしかないのでしょうか?」

2026.05.22

「支店長は投信販売の経験がありませんよね? 契約を取れと簡単に言わないでください!」

2026.04.17

「支店長! お客さまから商品選びを丸投げされてしまいます!」

2026.03.19

「支店長! 私たちが投資信託を販売する目的は何ですか?」

2026.02.26

「支店長! ノルマから解放されたいです!」

2026.01.23

「支店長! 金利が上昇しているのだから預貯金や円保険で十分です! お客さまにリスクの高い投資商品を提案する必要なんてないですよね?」

2025.12.22

「支店長! お客さまへ良い提案をするためのコンサルティング能力はどうやって向上させればいいですか。何に関心を持つべきでしょう」

2025.12.03

おすすめの記事

「その他有価証券」に許される「売買の頻度」の目安とは?

岡本 修

ゆうちょ銀・郵便局の売れ筋で債券ファンド「ますますグロタ」がジャンプアップ、「NASDAQ100」は3ランクダウン

finasee Pro 編集部

SBI証券の売れ筋は国内株「4.3ブル」に脚光、アクティブファンドの「WCM」や「世界のベスト」にも見直し

finasee Pro 編集部

常陽銀行の売れ筋で「日経225ノーロード」がトップを堅持、「ロボティクス」がジャンプアップ

finasee Pro 編集部

福岡銀行で「国内株」人気が浮上して米国テクノロジー株は後退、第7位浮上の「グローバル・ベスト」に火が付くか?

finasee Pro 編集部

著者情報

森脇 ゆき
もりわき ゆき
フィデューシャリー・パートナーズ 代表
信用金庫の預金業務担当を経て信託銀行に勤務、個人向け資産アドバイスを担当。担当総顧客数は約2000人、不動産・相続相談を含む総合的な資産アドバイスを経験する。深く学ぶにつれて、働く意義、社会貢献、自分にとっての良い仕事とお客さまの最善の利益を追 求するため、独立を決意。2018年、フィデューシャリー・パートナーズを設立。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
「その他有価証券」に許される「売買の頻度」の目安とは?
テクノロジー関連の成長とテーマ型ファンドへ投資する際の注意点
ゆうちょ銀・郵便局の売れ筋で債券ファンド「ますますグロタ」がジャンプアップ、「NASDAQ100」は3ランクダウン
マネックス証券で「日経半導体株」が大きくランクダウン、「オルカン」「WCM」「世界のベスト」を再評価
「うちは登録の予定ないから大丈夫」じゃ済まされない?「暗号資産交換業のセキュリティ方針案」に金融庁がにじませた“心配事”
【文月つむぎ】伊藤豊氏が金融庁長官に就任へ 
知っておきたい新長官&3局長の横顔
【第1回】株式ファンドは何を見て選ぶのか
COP28、ドバイで来週開幕   脱炭素実現へ、機関投資家はポートフォリオ見直しを
マーサー・サステナブル投資責任者インタビュー
【プロが解説】資源安全保障の観点から見たサーキュラーエコノミーの価値ーー資源調達の構造をどう変えるか
金融経済教育が定着しない本当の理由――後回しにされないための「行動に繋がる接触設計」を考える
ゆうちょ銀・郵便局の売れ筋で債券ファンド「ますますグロタ」がジャンプアップ、「NASDAQ100」は3ランクダウン
SBI証券の売れ筋は国内株「4.3ブル」に脚光、アクティブファンドの「WCM」や「世界のベスト」にも見直し
「その他有価証券」に許される「売買の頻度」の目安とは?
福岡銀行で「国内株」人気が浮上して米国テクノロジー株は後退、第7位浮上の「グローバル・ベスト」に火が付くか?
「支店長! 今の時代、対面の営業はネット取引ができないお客さまのためにあるのですよね? であれば、いずれこの仕事はなくなりますよね?」
テクノロジー関連の成長とテーマ型ファンドへ投資する際の注意点
常陽銀行の売れ筋で「日経225ノーロード」がトップを堅持、「ロボティクス」がジャンプアップ
顧客本位と投信ビジネスの成長を両立させるアクティブファンド活用論
【第1回】株式ファンドは何を見て選ぶのか
野村證券で「半導体」や「宇宙」などがランクダウン、安定資金流入の「のむラップ・ファンド」の上昇目立つ
【第1回】株式ファンドは何を見て選ぶのか
佐々木城夛の「バタフライ・エフェクト」第20回:生活道路の「30キロ規制」が各セクターにもたらす意外な影響とは

個別商品から、経営の仕組みへ―金融庁モニタリング結果(FDレポート)が示した顧客本位の次の段階―
「支店長! 今の時代、対面の営業はネット取引ができないお客さまのためにあるのですよね? であれば、いずれこの仕事はなくなりますよね?」
顧客本位と投信ビジネスの成長を両立させるアクティブファンド活用論
「売る」から「支え続ける」へ――「プログレスレポート2026」が示す資産運用サービス改革の現在地
テクノロジー関連の成長とテーマ型ファンドへ投資する際の注意点
マネックス証券で「日経半導体株」が大きくランクダウン、「オルカン」「WCM」「世界のベスト」を再評価
野村證券で「半導体」や「宇宙」などがランクダウン、安定資金流入の「のむラップ・ファンド」の上昇目立つ
「口座を開く」から「資産形成が根づく」へ――日証協の調査が示す国民皆資産形成への次の一手
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2026 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら