全世界株式インデックス投資をしていれば、投資の面でインフレを恐れる必要はない

さてさてこんな中、「高インフレは心配する必要があるでしょうか」、「何か準備すべきことはあるでしょうか」とご質問をいただくこともあります。

常日頃から、私がお勧めしている長期インデックスファンド投資はインフレに対抗するしくみを内蔵しています。株式投資の利回りはインフレ率を内包しており、インフレが高いときにはそれに応じて株式投資の利回りも上がります。全世界の株式インデックスに投資していれば、国ごとのリスクは分散しながら、かつインフレを内包しつつ、それを超える勢いで資産を増やしていくことが狙えます。ですから、すでに長期インデックスファンド投資をしておられるなら、何も思い煩わず今までの通り投資を続けて下さいとお話ししています。

インフレは、それに見合った率で所得も増え、それに見合った率で資産も増える人には、決して怖いものではありません。物価が上がるのは好ましくないけれど、それ以上の率で給料が上がっていれば、収入も増えて支出も増えるので、月々の収支は赤字にはなりません。また、物価上昇以上の率で資産も増えていれば老後の生活にも対応できます。

インフレは中低所得者にとって打撃となり、格差拡大につながる懸念も

問題は資産か所得のどちらか(あるいは両方)がインフレに見合った増え方をしていない場合です。

まずは収入を見てみましょう。アメリカでは収入格差が非常に激しいですが、収入上昇率格差も非常に激しいです。アメリカの労働者の年収をボトムからトップに並べた場合、2010年 から 2019年の間で、 ボトム20%の収入はインフレ調整後の実質伸び率(インフレ調整後の伸び率)は年間1.9%から2.2% 、トップ20%の収入の実質伸び率は年間2.8%程度でした。

グッドニュースは、ボトムもトップも実質で0%以上の伸びを記録していますから、インフレ率よりも収入が増えているということです。しかしながら、この実質の伸び率の格差は広がっており、トップ20%の伸び率がどんどん増えている一方で、それ以外の80%を占める収入レベルの人の伸びはそれほど進んでいません。また同じ1%の伸び率であっても、ボトム20%の平均年収は$20,000ですから1%は$200の伸び、トップ20%の平均年収は$250,000強ですから1%だと$2,500と絶対額にして大きな差があります。

今後、不動産、自動車、ガソリン、食品、医療費、学費など生活必需品のインフレが4%、5%、それ以上と大きくなっていくと、収入伸び率が追い付かない中低所得者にとっては大きな懸念材料です。

また、資産の方はどうでしょうか。子どもの大学の費用や自分たちのリタイヤメント後の生活など、これからインフレ率に応じて価格上昇し続けたあとの将来価格に対抗するためには、長期での資産準備においても、インフレ率を超える率での運用が重要になってきます。

これまた、アメリカの株式投資に対する格差は甚だしく、富裕者トップ10%が全米株式の81%を保有し、中間層(ボトム20%からトップ20%までにあたる中間の60%)、言い換えれば「普通の人々」が所有している株式は全米市場の8%以下というデータもあります。給与所得が大きければ余剰金も大きく、ますます投資がしやすくなり、リスクをとってインフレをはるかに上回る運用利益を出すことができる一方で、給与所得が少なく投資に回せる余剰金のない人は、インフレに対応した資産運用ができないでいる場合が多いのです。

こうなると、収入も資産もインフレ率以上に増え続ける富裕層と、収入も資産もインフレ率に対応できない貧困層という差がどんどん広がっていくことになります。悲しいことですが、それがアメリカの現実です。