転職先にDCがない人に向け「通算企業年金」もスタート

もうひとつの試みは、企業型DCの移換先の拡大です。企業型DCに加入していた人がその会社を離職すると、これまでは選択肢は2つでした。すなわち新しい会社に企業型DCがあれば企業型DC、なければiDeCo加入です。この二択のうち、iDeCo加入はやはりハードルが高いと思う方がいらっしゃったのも事実です。

iDeCoの場合、まず運営管理機関を選び、掛金を決め、自分で運用商品を選ぶ必要があります。企業型DCの場合は、会社が運用商品も提供しますし、会社から拠出された資金ですから、あまり考えずに定期預金で運用しても問題なしと考えている人も少なくありません。それが離職に伴い、いきなり能動的にならなければいけないのですから、大変だと思う気持ちも理解できます。

そんな方たちの選択肢になりうるのが2022年5月から始まる「通算企業年金」への資産移換です。通算企業年金というのは、企業年金連合会が資産を預かり運用し、一定の年齢になったら終身年金で受給できる仕組みです。iDeCoと異なり、手続き後はお任せで年金開始まで待っていれば良いのですから、負担感はありません。つまり離職時という「川上」で難民になってしまう前に受け皿を増やすのです。

通算企業年金における年金の支払い開始時期や運用における予定利率は移換時の年齢により異なるのですが、例えば50歳の方がDCの資産を企業年金連合会に移換すると、予定利率1.25%で資産が引き続き運用され、65歳から終身年金で資金を受け取ります。(予定利率等は現在企業年金基金連合会のウェブサイトに記載されている企業年金資産についての情報を元にしています。実際は施行時の情報を参照して下さい)

いずれにしろ、川上(離職時の選択肢の拡大)と川下(RKによる資産移換)で挟み撃ちをしてDC難民を減らそうという動きがあるのはとてもよいことだと思います。とはいえ、企業型DCの加入者の意識が最も重要であることに変わりはありません。「会社に言われたので」という感覚でなんとなく企業型DCに加入しているという状態を脱して、制度を最大限活用するという意識変換が必要です。

企業型DCに加入している方も、2022年からはiDeCo併用が認められます。今までは会社がiDeCo併用を認めてくれている時のみiDeCo加入ができましたが、今後はどなたでも月2万円という枠で加入が可能になります(ただし、会社の掛金と合わせての上限が設定されています)。もし会社でマッチング拠出を認められている方でも、iDeCo併用と比較して有利な方を選択することもできます。これらを活用することで、将来に向けてより効率的に資産形成をすることが可能です。

制度自体はどんどん整備され、良くなっています。あとは使い方です。だれにでも準備されている制度ですから、使わなければ損、無関心なんてもったいない。制度を使うかどうかは、案外、書類1枚を書くかどうかの違いであったりしますが、将来的には「アリとキリギリス」のお話のように、かなりの差になっていくでしょう。