アクティブファンドは独特な個性を放つファンドを見つけられるのも魅力の一つです。そのファンドマネジャーとはどんな人で、どんな投資哲学を持ってファンドを運用しているのでしょうか? いま気になるファンドマネジャーにインタビューしてみました。今回話を伺うのは、「厳選ジャパン」(アセットマネジメントOne)を運用する敏腕ファンドマネジャーと名高い、岩谷(いわや)渉平ファンドマネジャーです。
同ファンドの、2021年2月末現在の過去1年の基準価額の騰落率は実に+112.53%と、国内株式ファンドではリターントップの成績を出しています。
東京大学経済学部卒業。日本興業銀行にて主に財務・主計業務を経たのち、外資系運用会社を経てDIAMアセットマネジメント(現アセットマネジメントOne)に入社。現在はファンドマネジャーを務める。経済産業省「バイオベンチャーと投資家の対話促進研究会」委員等。
企業の主計室所属時に感じた“株価”のダイナミズム
――最初に岩谷(いわや)さんのご経歴を教えてください。
1998年に新卒で日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行し、主計室で決算業務やIR(投資家向け広報)を担当しました。2004年に転職を決意しUBSグローバル・アセット・マネジメント(現UBSアセット・マネジメント)へ。そこでアナリスト兼運用を経験し、その後DIAMアセットマネジメント(現アセットマネジメントOne)に転職しました。
――銀行員から資産運用の世界に飛び込まれたということは、元々ファンドマネジャーになりたかったのですか?
いえ、マーケットには全く興味はなく、むしろ「あの業界はきっと、非常に強欲な人たちの集まりなんだろう」と思っていたので、それを仕事に選ぼうという気持ちはありませんでした。
ところが、銀行員時代に感心したことがありまして。
主計室の実務者として自行の「会計的な価値」を算出する銀行の内側の立場から見たときに、「マーケットには、本質を見抜く力がある」と思う瞬間があったんです。
業務に精通していくうちに、自分たちが算出した数字よりも、流動性を持って価格を出してくるマーケットのほうが、適正にシグナルを見つけ出して、フェアで、妥当性のある株価形成をするな、と思うようになりました。
業績が良くなっていく時に株価が上がるのはもちろん、業績が悪くなっていく時でさえマーケットには先見性があって、株価のほうが先行するときもしばしばありました。しかも、長い目で見れば見るほどそのシグナルがマーク(整合)する、ということが分かったんです。それが、マーケットに興味を持ったきっかけですね。
――マーケットで評価される側にいたことで、株価の仕組みの面白さを知ったということですね。
その通りです。
銀行の本決算は数字を出すのに何カ月もかかります。1月から準備を始めて、3月に締めて、そこから補正したり、追加したりで、やっと数字が固まる大変な重労働です。でも株価は瞬時に、「一発で」それらを織り込んできます。
例えば自分の健康状態を知ろうとしたとき、病院で血液検査や胃カメラ、心電図などいろいろと検査を受け、医師の問診を受け、検査結果を待ってと、最終的な答えを知るまでに時間がかかりますよね。これが決算資料だとすると、マーケットは、会って早々に「あなたの健康状態は、10点中7点です」と断言する何者か、といったところでしょう。そう感じるほど高い、株価のリアルタイム性とか価格発見機能はなかなか優れたものだと思ったんです。それは、今でも感心するところです。
――株価のダイナミズムに感心されたんですね。UBS時代はいかがでしたか?
グローバル運用の中の日本株部門でアナリスト兼運用を担当し、伝統的なリサーチや投資の手法を学びました。UBSには4年いて、さまざまなセクターを勉強しました。非常に洗練された世界で、首尾一貫している、正しいアプローチ方法を学んだと思います。
――リーマンショックで市場全体が低迷した後はアベノミクスでずっと上昇相場でしたが、「DIAM新興市場日本株ファンド」でそれを凌駕する素晴らしい結果を出されました。ご自身が運用されるようになって、具体的にどのようなことをされたのでしょうか?
対象となる新興市場銘柄が活躍すれば、このファンドもパフォーマンスが良くなる仕組みになっています。最近はとても良い会社がマザーズやジャスダックなど新興市場に上場してきていますから、それが功を奏しているのではないでしょうか。