評価の信頼性は? 過去にはリーマンショックのきっかけにも
格付け機関による評価は社債や国債を購入するときの参考になる。ただ、評価は絶対的に信用できるものとは限らず、過去にはリーマンショックのきっかけとなったことも知っておきたい。
2008年9月、当時、全米投資銀行で第4位の資産規模を誇っていた「リーマン・ブラザーズ」が経営破綻。世界中の経済に影響を及ぼし、日本でも長期に渡る不景気がもたらされた。
そんなリーマン・ブラザーズ経営不振の背景には、回収困難となった「サブプライムローン」が深く関係している。
サブプライムローンの特徴は、通常であれば審査を通ることができないような信用度が低い人々を対象としていること。そのため回収不能となるリスクが高いと言われていた。しかし、サブプライムローンを証券化という手法を使って金融商品に組み込み、投資家への販売を一早く推し進めたのがリーマン・ブラザーズ。これが躍進の原動力となった。
アメリカでは1990年代後半から住宅価格が上昇しバブルが始まり、サブプライムローンを利用して住宅を買う人も増加した。
しかし、2006年にFRB(連邦準備理事会)が政策金利を上げたことなどをきっかけに住宅価格の伸びは止まり、2007年に住宅バブルが崩壊。2007年ごろから多くの債務者がローンを返済できない状態へと陥った。その結果、サブプライムローンが組み込まれた金融商品の価値も大きく下落し、リーマンショックが起きた。
証券化されたサブプライムローンは、本来であればリスクの高い金融商品だ。にもかかわらず、なぜ投資を行う人が多かったのか。そこには格付け機関による評価が関係している。
証券化されたサブプライムローンは、住宅バブル崩壊まで「投資適格」との評価を受けていた。つまりリスクが低く、安全性が高いために投資先としてふさわしいと認定されていたわけだ。
これは、サブプライムローンが証券化され、他の金融商品との組み合わせで販売されていたことが主要因といわれている。抱き合わせで販売されていたため、サブプライムローン自体のリスクが認識されづらくなっていたのだ。また、住宅購入価格が上昇傾向にあったことなども理由に、格付け機関から高い評価を受けていた。
この件について「不当に高い評価を与えた」と、米国最大手の格付け機関であるムーディーズとS&Pは、米司法省と21州の検察当局から責任を問われることになった。結果、2016年にS&Pが15億ドル(約1760億円)、2017年にムーディーズが8億6400万ドル(約970億円)の制裁金を支払っている。
格付け機関の評価は絶対的なものではない
リーマンショックをきっかけに、全世界で格付け機関のあり方も見直された。各国で法改正が行われ、日本でも2010年に金融商品取引法が改正。格付け機関の体制を十分に整備したうえで、経産省の監督下に置かれることが定められた。
とはいえ、格付け機関の評価は、必ずしも信頼のおける情報とは限らない。あくまでも、金融商品またはその発行体となる企業の現状から将来性を予測するものだ。予測である以上、評価は主観的なものとなり、絶対的ではない。信用できる債券かどうかを判断する一つの材料として考えておきたい。