「日経平均株価」という企業は存在しない

これまでの説明をもとにすると、「日経平均株価のEPS」とは「日経平均の1株あたり利益」といえる。しかし、ここで注意したいのが「日経平均」は株価指数の一つであり、日経平均という企業があるわけではないという点だ。

日経平均株価とは東証1部に上場する全2194社(2021年3月1日現在)から、日本経済新聞社が業種などのバランスをもとに選んだ225社の平均株価を指す。

詳しく説明すると、正確には単純に225社の株価を合算してその社数で割っているわけではない。

実際には、時価総額の違いや株式分割などによる影響を考慮した調整が行われている。株価の合計は銘柄ごとの「みなし額面」をベースに算出され、割る数(除数)も銘柄の入れ替わりの度に設定される特定の数値を利用する。どちらも日本経済新聞社によって定められており、このうち、みなし額面とは株価の水準をそろえるための考え方だ。50円を基準とし、みなし額面が50円ならば、株価をそのまま日経平均の算出に採用。500円などの場合は株価を10分の1にすることで、株価の高い銘柄の影響を抑えている。

各構成銘柄の採用株価=株価×50(円)÷みなし額面(円) 日経平均株価=構成銘柄の採用株価の合計÷除数27.769(2021年3月1日現在)

日経平均株価のEPSを求める場合、当期純利益に該当するのは「225構成銘柄の予想1株あたり利益の合計」となる。そこで、まずは「各構成銘柄の予想1株あたり利益」を計算する。

各構成銘柄の予想1株あたり利益=1株あたりの純資産×50(円)÷みなし額面(円)

その上で、各1株あたり利益を合計した値を、除数27.769で割る。

日経平均のEPS=225構成銘柄の予想1株あたりの合計÷27.769(2021年3月1日現在)

ここで注意したいのが、1株あたりの利益はあくまでも予想値を利用しているということ。225の構成銘柄の中には業績予想を非開示にしている企業もあるが、日経平均のEPSはそれらも含めて算出される。そのため、EPSをもとにPERを計算しても場合によっては現実とかけ離れた異常値が出る可能性があり、単純に割高か割安かどうかを判断するのは難しい。

またEPSが高くなると「好業績」、低くなると「業績悪化」と単純に評価される。しかし、業績予想を非開示にしている企業が含まれる限り、あくまでも目安として捉えておく必要がある。