2021年の金融市場も新型コロナウイルス次第か

2021年についても、引き続き新型コロナウイルス情勢に注意しなければいけない展開が続くと思われる。2020年、特に世界中で感染が再拡大していたのにも関わらず株価が上昇したのは、ワクチンの早期普及に伴う経済活動の正常化が期待されたためである。つまり、金融市場ではワクチン普及後の景気回復まで既にある程度織り込まれているように思われる。もしワクチン普及が遅れる、または普及したものの期待されたほど効果が上がらなかった場合には、金融市場でも材料視される可能性が高い。いずれにしても現時点では予想は難しく、2021年も2020年と同様に不透明感が強い状況が続くと思われる。

このように不透明感が強い状況下では、特に自身に合った資産運用を心がけたい。2021年も昨年3月のような急落が起こる可能性があり、仮にそのように急落があっても落ち着いて冷静に対応できるか、リスク性の高い金融商品を保有しすぎていないか、ぜひ一度、確認していただきたい。また新規に投信などを購入する際にも、一度にまとめて購入すると結果的に高値づかみになってしまう可能性があるため、数回に分けて時間分散して購入する等の工夫が必要となるだろう。2020年、株式投信が好調だったからといって前のめりにならず、同年3月のように急落したら買い増そうとするくらい、余裕を持って行動できるのが理想である。

分散投資しつつ、克服後の種まきも

また投資する商品も、投資の定石である分散投資を心がけて選んでいただきたい。不透明感が強く、先行きを予想することが難しいときはあえて予想する必要はないと思われる。予想せずに幅広くさまざまな地域や資産に分散投資することが、簡単かつ失敗の可能性が低下する方法である。そういう意味では2021年も今までどおり地域分散が効いたインデックス型の外国株式投信や、さらに資産分散も効いているバランス型投信といった商品が有力な投資先となるだろう。

2020年に高パフォーマンスであった株式投信などに2021年も引き続き期待したくなるかもしれないが、2020年に大きく上昇した株式(投信)の中には割高になっているものもあると筆者は考える。新型コロナウイルスのワクチンに対する期待感に加え、世界的に行われている大規模な金融緩和策、低金利によって割高な株価水準でも許容されやすかったことも2020年の株高の背景にはある。今後迎える金融政策が正常化に向かう局面、つまり金利上昇局面では、割高になっている株式は現在の株価水準を維持できずに下落する可能性がある。つまり、どんなに事業の将来性がある企業でも株価が割高となっている場合は、短期的に下落するリスクも高くなっている可能性も潜んでいるわけである。投資する場合は、先ほどと同様に高値づかみに気を付けつつ、時間分散して購入する等の工夫をすることをお勧めしたい。

逆に、しいて注目している資産クラスや投信を挙げるとするならば、むしろ2020年にパフォーマンスが優れなかった資産クラスや投信である。金融市場全体では経済活動の正常化をかなり織り込んだ状況になるが、個別でみると織り込み具合にかなり差があった。2021年中にどうなるかは分かりかねるが、今後、本当に新型コロナウイルスを世界的に克服したとなると、今まであまり正常化が織り込まれていない資産クラスや投信ほど上昇余地が大きいと思われるためである。具体的にはREIT投信などが挙げられる。

ただ、新型コロナウイルスによって社会システム自体が構造的に変わってしまった可能性があるため、新型コロナウイルスを克服しても元の状況には戻らないリスクもある。たとえば、REITについては在宅勤務の定着とともにオフィス需要が減少する可能性も指摘されている。新型コロナウイルス情勢と合わせて、その克服後の社会変化も踏まえて投資先を選別する必要があるだろう。