先取り貯蓄をして生活は成り立つのか? という不安は的中しないことが大半

と、ここまで先取り貯蓄の方法を解説しましたが、ひょっとしたら「先取り貯金をしたら生活が成り立たなくなってしまう」と不安に感じたかもしれませんね。

しかし筆者はこれまで多くの方の「生活がカツカツになるのでは……」という不安が現実のものとなり、本当にカツカツになったケースをあまり知りません。

その理由は簡単で、相談に来られる多くの方は家計簿などを作成されておらず、仮に作っていても振り返りなどされていません。

このような方にざっくりとした月の収支を書いてもらうと全く合わなくなり、使途不明金が発生します。経験上、これら使途不明金の半分以上はなくても生活に影響しない出費です。

そして先取り貯金の後の「あるお金の中でいかに工夫するか」を磨いていくのは、加納さんがこれからの長い人生、マネーリテラシーを身に付けていくうえで、決して避けて通ることはできない道でもあります。

先取り貯金をし、残ったお金の中で生活を営むということをぜひ身に付けていってください。

 老後不安を解消するには投信積立を

老後への不安は、突き詰めると加納さんがご自身の老後生活でいくらあったほうがいいかと思われるかが全てです。一つの目標として、この場では2000万円を挙げさせていただきますが、そこに対して現在33歳の加納さんが、残り約30年でどうやってアプローチするか考えましょう。
 

まずは単純に割り算です。
2000万円÷30年÷12ヶ月=毎月約5.5万円

これは現実的と感じますか? 仮に切り詰めれば実現可能だとしても、やりたいと思いますか? 30年後にしか使えないお金を毎月5万円以上も今の生活から無くしてしまう……。おそらく心の中で「無理!」と叫ばれると思います。

次に2000万円を30年で積み上げるときに金利を含めてみましょう。30年の平均金利が年3%複利で運用できた場合、月々の積立金額は約3.5万円になります。いかがでしょうか? 少し現実的になったのではないでしょうか?

さらに少し上げて5%だとしたら2.5万円です。ここまでくるとかなり現実的になってきたのではないでしょうか。

金融庁が提供しているシミュレーション(金融庁 資産運用シミュレーション)では、毎月の積立額と期待する年利を入れると、いくら貯められるのか簡単に計算できます。加納さんもぜひ設定を変えて、いろいろなケースを想定してみてください。

もちろん資産運用は将来の成果を約束しているものではないので、30年間の運用結果が必ずこのようになる保証はありません。ただ、例えば投資信託を通じて積立投資をすることで、投資先を分散し、そして30年という時間を味方につけて時間にも分散を効かせる、この投資先・時間のダブルの分散があれば、利益を出せる確率を高められることも事実です。

まずは生活に影響を与えない範囲で――加納さんの場合で言えば娯楽費に消えてしまう5万円から1万円でもいいので、“先取り”で自動的に投信を買い付ける設定をし、積立投資を取り入れられてはいかがでしょうか。そして、積み立てていく「器」は、ぜひつみたてNISAという非課税口座を活用してください。積立投資をする中で将来的に利益が出ても税金がかからないのがつみたてNISAですので、積立投資を始められるのでしたら活用をお勧めします。

ここでお話ししたことは、お金と付き合うための初歩的な知識です。これを身に付けるかどうかは、加納さんの今後の人生に大きな影響があると感じます。気づいた時が始め時。先取りの仕組み作りで、不安を減らす努力をしていきましょう。応援しています。