わが家のPLとBSを作成して、定年後のお金の動きを把握する

――おっしゃる通り、“他人事”の情報で「老後資金が足りない!」と大騒ぎしても意味がないですね。“自分事”に落とし込むために、セミナーではどんな方法をアドバイスなさっているのですか?

私が受講者に勧めているのが、「お金の棚卸し」です。

まずは、現在の家計の収入と支出を「損益計算書(PL)」にまとめてもらいます。さらに、現時点での資産(預貯金・有価証券・保険・不動産など)と負債(住宅ローン・教育ローン・自動車ローンなど)の額から定年時の評価額を割り出し、老後に予定される支出(老後の生活費・自宅のリフォーム費用・子どもの教育資金・子どもの結婚援助資金・旅行資金など)を予想して、「賃借対照表(BS)」を作成するのです。

BSまでたどり着けば、“自分事”の老後がかなり具体的な形で見えてきます。しかし、セミナーでこれをやろうとすると、最初の家計の把握からつまずいてしまう受講者が多いのです。受講者が50人いるとしたら、家計簿を使っているのはせいぜい2人くらい。恐らく、読者の皆さんも大半の方が家計簿を付けていらっしゃいないのではないかと思います。

50歳になると、会社でもキャリアを積んで、若い頃より給与もぐんと上がっている方が多いはずです。そういう方ほど“ザル家計”になりがちで、だからこそ家計簿を使って家計管理を行う習慣を付けておく必要があります。今は電子マネーでほとんどの支払いに対応できますから、家計簿の記帳もラクになっています。何より、「お金の棚卸し」の第一歩はそこから始まるのです。

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後編「定年までの「あと10年」でできる!“老後破産”の回避策 」に続きます。