定年後の情報を得ることは大切だが、その情報に踊らされてはダメ
――定年準備のキーワードは50歳ということですね? 鈴木さんの口からそういう言葉を聞くと、説得力があります。ライフプランセミナーでは、具体的にどんなことをお話しされているのですか?
最初は「不安の共有」から始めることにしています。企業の研修は嫌々参加している人も少なくないので、スタート時点で受講者に自分の定年後への危機感を持ってもらう必要があります。人生100年時代ですから、老後の生活にはそれなりのお金がかかります。一方で、今の収入がずっと担保されるわけではありませんよ、という具合です。2019年に「公的年金だけでは老後資金が2000万円足りない」問題が大きく取り上げられたことで、だいぶやりやすくなりました。
しかし、気を付けなければならないのが、情報を得ることが大切な半面、その情報に踊らされてはいけない、ということです。先の「2000万円足りない」問題で、老後の生活費の算出根拠となったのが総務省の「家計調査」です。「夫65歳以上、妻60歳以上の無職夫婦世帯の標準生活費」を見ると、例えば月々の住居費は、ここ数年、1万3625円~1万7500円で推移しています。
調査対象となった今の60代のご夫婦に持ち家の方が多かったためと推測されますが、賃貸住まいの方はもちろん、持ち家であってもご自宅がマンションの場合は管理費や修繕積立金の支払いが毎月必要ですから、到底この水準では収まらないですよね? 都市部か地方かによっても大きく異なります。このように、“他人事”の情報ばかりを集めても、実際にはほとんど役に立ちません。集めた情報は“自分事”に落とし込んでいく必要があります。