投資経験者は新NISAの2階だけを使うこともできる
ここまで原則のお話をしてきましたが、一般NISAを利用していた人(NISA口座開設者)や上場株式などの投資経験者は「1階部分」を利用しないことを証券会社等に届け出れば、「2階部分」のみ利用することもできます。
ただし、その場合、2階で投資できるのは個別株のみ。株式投信やETF、REITなどへの投資はできません。年間の投資枠も102万円までとなります。
ここまで新たに新NISAを利用する場合をみてきましたが、これまで一般NISAを利用してきた人はどうなるでしょうか。すでに一般NISAを利用している人は新制度開始時に自動的に新NISAが設定されるため、再度マイナンバーなどの本人確認書類を出し直す必要はありません。
一般NISAは非課税期間が5年なので、非課税期間5年終了時に「1.(何も手続きしないと)特定口座などの課税口座に移管」「2.新たなNISA枠にロールオーバーする」「3.売却する」といった選択肢がありました。
2024年から新NISAに衣替えしてもこの選択肢は同じです。例えば、2019年に一般NISA枠で株式や投資信託などを購入した人は、2023年末に非課税期間が終了します。その際の選択肢は「特定口座(課税口座)に移管する」「2024年の新NISA枠にロールオーバーする」「売却する」のいずれかです(新NISAでは対象外となる、レバレッジを効かせている投資信託、上場株式のうち整理銘柄・管理銘柄はロールオーバーできません*1)。
*1 詳細は今後告示等で示される予定
このうち一般NISAから新NISAへのロールオーバーは少々複雑です。
新NISAの枠(122万円)を超えてロールオーバーする場合
新NISAの投資枠(1階と2階を合わせた122万円)を超えていても全額ロールオーバーすることができます。例えば、2019年に一般NISA枠で投資した株式や株式投信が140万円になった場合も、すべてロールオーバーできます。
新NISAの枠(122万円)以内でロールオーバーする場合
では、新NISAの投資枠122万円に収まる場合はどうなるでしょうか。
その場合は2階(102万円)から枠を埋めていきます。2階の枠がすべて埋まったら、次に1階の枠(20万円)を埋めていきます。
例えば、2019年に投資した株式や株式投信が110万円になった場合、2階の枠102万円を超えるので、1階の枠8万円を使います。1階の枠は12万円残るため、2024年の新NISAでは12万円の範囲内で1階で投資ができる、ということになります(1階なのでつみたてNISA対象商品の積み立て限定)。
では、ロールオーバーしても2階の枠(102万円)が残っている場合はどうでしょうか。例えば、80万円分を新NISAにロールオーバーする場合、2階部分は102万円-80万円=22万円残っています。
ここで思い出していただきたいのが、新規資金で新NISAを利用する場合のルール。まず1階を利用してから2階を使う、という順番でした。この場合も、1階で積み立て投資を行った上で、2階の22万円枠を使うという順番になります。
ただし、投資経験者の場合、2階で個別株だけに投資をして、1階は使わないという選択をすることもできます。