「ねんきん定期便」の記載は“額面”――給与や賞与と同様に税金や社会保険料が徴収される

老後の準備は50歳から!定年までにやっておきたい、マネー10のこと」の中で、50代になったら、毎年の誕生月に届く日本年金機構の「ねんきん定期便」などで将来受け取れる年金額を把握しておこうという話をしました。

しかし、ここで1つ気を付けたいことがあります。ねんきん定期便に記載されている年金額はあくまで支給額、つまり“額面”であり、給与や賞与と同じように、そこから税金や社会保険料を納めなければなりません。雇用保険の失業給付などとは違って、年金はしっかり収入にカウントされ、その金額に見合った税金や社会保険料を負担する必要が生じます。

税金や社会保険料の負担額は所得や年齢、家族構成などによっても変わるので一概には言えません。ただ、一応の目安としては、トータルで「年金収入の10~15%前後」とされ、65歳から受け取る年金の“手取り”は“額面”の85~90%までダウンすると考えておくといいかもしれません。

税金は「所得税+住民税」、社会保険料は「国民健康保険料+介護保険料」がかかる

年金にかかる税金は、所得税(2037年までは復興特別所得税も徴収される)と住民税です。

年金には、割と手厚い「公的年金等控除」があり、65歳未満の受給者は年間で60万円、65歳以上の受給者は同じく110万円を超えた分だけが課税対象となります。

では、厚生年金に加入するサラリーマンで、ねんきん定期便に記載された65歳以降の受給予想額が年240万円(月額20万円)だとしたら、どれくらい税金がかかるのでしょうか。所得税を例に取って計算してみましょう。

年金は税法上の雑所得扱いとなり、サラリーマンの給与所得とは別枠になります。

年金収入が240万円の人なら、まず、110万円の公的年金等控除が適用されます。これに加えて、基礎控除、配偶者控除、社会保険料控除などの各種控除も差し引くことができます。このケースでは、該当するのは本人の基礎控除48万円、専業主婦の妻の配偶者控除38万円、社会保険料控除15万円と仮定しましょう。

240万円-(110万円+48万円+38万円+15万円)=29万円

控除後の金額29万円に税率をかけたのが所得税額です。

29万円×5%(所得税率)×102.1%(復興特別所得税率)≒1万4800円

この1万4800円が、240万円の厚生年金を受給する人(専業主婦の妻あり)にかかる所得税ということになります。

所得税と比べると、「住民税」の計算は少々複雑です。お住まいの市区町村によっては、ウェブサイト上の「住民税額シミュレーション」に年金の支払金額などを入力するだけで簡単に住民税額を試算することができるので、ご利用いただくといいと思います。

社会保険料で年金から支払う必要があるのは、国民健康保険料(75歳以降は「後期高齢者医療保険料」)と介護保険料になります。こちらはお住まいの地域によって金額が異なり、なおかつ、住民税同様に算出方法が厄介です。

国民健康保険料については、多くの市区町村でウェブサイトから試算ができるようになってきました。介護保険料も調べておきたい方は、市区町村の担当部署に尋ねるのが手っ取り早いかもしれません。