年金には“211万円の壁”がある――住民税非課税世帯には多くの優遇措置が

年金の少ない人、例えば65歳以上で年金収入が年158万円(公的年金等控除+基礎控除)以下だと、所得税は課税されません。自営業者やフリーランス、専業主婦など国民年金のみの加入者なら、そもそも65歳から受け取れる老齢基礎年金は満額支給でも年78万1700円(2020年度)ですから、上乗せ年金や他の所得がなければ税金はかからないことになります。

夫婦だけの世帯で妻がずっと専業主婦だった場合、夫の年金収入が211万円(東京23区の場合。地方の場合はこれよりも低くなります)であれば「住民税非課税世帯」となり、税金だけでなく、さまざまな優遇が受けられます。社会保険料だと、介護保険料の負担がここを境に一気に下がります。また、自治体によっては、国民健康保険料の減免制度も用意されています。

それだけではありません。健康保険が適用される医療費の自己負担限度額(医療費が月ごとに一定の上限を超えた場合は、超えた分が戻る)も低く設定されますし、自治体によっては健診(検診)や予防接種が安く受けられたり、入院時の食事代が軽減されたりします。

東京都の場合、在住者が70歳になると都営交通が無料になるシルバーパスが使えますが、これも、住民税非課税者なら1000円の負担で発行されます(課税者は2万510円)。

ねんきん定期便の支給予想額が210万円前後の人にとっては、この“211万円の壁”は意識しておきたい数字です。