投資信託でよく見る為替ヘッジ「あり」「なし」の違いは?

また、為替相場は資産運用とも関係している。

投資信託の中には、私たちから預かったお金を運用して増やすため、国境を越えて株式や債券を売買するものもある。このとき貿易で国境をまたいでモノが売り買いされる理屈と同じで、米国株を買うためのドルを手に入れるために円を売る。つまり投資家から預かった日本円をドルに交換して、株式を買うわけだ。逆に資産を売って得た売却益はドルで戻ってくるため、利益の一部を投資家に還元する場合にはドルを円に両替する必要がある。

仮に株式の購入時よりも、売却時に円高方向へと進行してしまうと、現在持っているドルよりも円の価値が高いことになる。つまり、運用成績にかかわらず、ドルを円に交換する過程で損失が発生してしまうケースもあるのだ。

例えば投資対象の資産が1%値上がりしたとしても、売却時にドルを円に交換する過程で2%の円高が進んでいれば、全体の運用益は−1%(=1%−2%)となってしまう。逆に1%値上がりして、なおかつ売却時に2%の円安に進んでいれば運用益は3%(=1%+2%)になる。

こうした為替の影響を軽減するために用いられるのが、「為替ヘッジ」という仕組みだ。為替ヘッジありの投資信託の場合、あらかじめ将来の通貨を交換するときの比率(為替レート)を約束するためこうした為替の変動リスクをヘッジ(回避)できる。そのため円高による為替変動のリスクを低減可能な反面、円安による差益は得られない。

逆に為替ヘッジなしの場合、為替の変動リスクをそのまま受けてしまう。

ただ、為替ヘッジありの場合、為替変動というリスクを軽減できる分、信託報酬とは別にコストもかかってしまう。為替変動のリスクを受ける受けないにかかわらず、いずれにせよ運用効率は下がってしまう可能性があるわけだ。余計な運用コストをかけずに運用益や円安による差益を得たい場合は、為替ヘッジなしの商品が候補に入ってくるだろう。ちなみに為替ヘッジのコストについては、各商品の月次レポートなどで確認できる。

今回紹介したように為替相場は、資産形成の手段である投資信託などの金融商品や、ガソリンや小麦といった輸入品価格にも影響を与えていることがわかる。何も一部の短期売買を行うトレーダー向けの話ではなく、為替相場は日常生活にも密接に関係していることは知っておきたい。