為替相場も需要と供給の関係で価格が決まる
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、マスクの値段が上がったことは記憶に新しい。これは多くの人がマスクを欲したのに対し、生産が追いつかなかったためだ。
こうした需要と供給の原理は、為替相場でも起きている。
例えば、よく例として出されるのが貿易だ。日本企業からアメリカへの輸出が増える際、通貨の需要と供給はどう変化するのか考えてみたい。
日本の輸出企業がアメリカで商品を販売するとき、代金として受け取るのは「ドル」だ。しかし最終的には、円で受け取らなければならない。なぜならドルを持っていても、日本国内での仕入れ代金や従業員への給料を支払うことはできないためだ。
輸出量が増えると、日本企業がドルを円に替える、つまり円を買う需要も自ずと増える。そのため日本の輸出が輸入を上回り、貿易黒字が増える場面では円の買いが増え、為替相場も円高に動きやすくなる。
逆に輸入量のほうが増えると、自然とアメリカの企業が日本円を売って、ドルに交換する機会も多くなる。すると円の需要が減り、ドルの価値が相対的に高くなるため、円安・ドル高方向に動きやすくなる。円安になると、エネルギー資源や食料の大部分を輸入に頼っている日本では、国内のガソリン価格や小麦を代表とする食品価格が上昇することもありえる(輸入品を買うにあたって、これまでよりもたくさんの円が必要となるため)。
ちなみに今回のコロナ禍では、日本からの輸出と輸入の両方が減少するとの見方が強いため、貿易による為替相場への影響は限定的だと言われている。