企業業績の二極化が進む中、投資対象の峻別が重要に

――行き不透明な状況は続くのでしょうが、ウィズコロナの投資テーマとして、有望な分野と警戒すべき分野を教えてください。

生活様式が大きく変わることは避けられないため、企業業績も新しいライフスタイルに沿っているかどうかで明暗が分かれることになるでしょう。

まず、接触や移動を伴うモノやサービスは厳しい状況です。政府のGoToトラベルキャンペーンは東京除外によって期待できる経済効果が腰折れしてしまったこともあり、観光や旅行、外食、鉄道・航空なども厳しい状況が続くでしょう。旅行や観光需要はコロナの脅威がなくなれば回復できるでしょうが、コロナ前に戻れない領域も多くあります。例えば、リモートワークやオンライン会議が浸透すればオフィス需要や出張もコロナ前の水準に戻るのは難しく、終息後も不動産やオフィスREIT、航空、運輸などは楽観視できません。

しかし、接触や移動を伴っても、付加価値の高いものはむしろ需要が増える可能性もあります。コロナ前から「万人受け」を狙ったものが減速する一方で、特定の層に強烈に刺さるアプローチが成功する傾向は見られていましたが、この動きは加速すると考えられます。

一方で、新しい生活様式にフィットするウィズコロナの領域は、成長が期待できるでしょう。これらは大きく4つの柱に分けられると考えています。

第1に、コロナウイルスに直接対応する領域です。治療薬やワクチンのほか、検査キット、衛生などの分野が中心となります。

第2が、新しい働き方とライフスタイルに関する領域です。在宅時間が増えることによる食品や生活関連の小売、冷凍食品やインスタント食品、ゲーム、調理家電、エクササイズ、ECとそれに伴う物流や倉庫、テイクアウトが増えることによる食品トレーやパックなどの分野があります。

第3がオンライン化です。テレワーク、オンライン教育、オンライン診療、パソコンと周辺機器、動画配信などが有望です。

最後はオンライン化を支えるデジタルインフラです。ICT、クラウド、光ファイバー、データセンター、5G、サイバーセキュリティーなどに加え、これらの技術を支える半導体も期待できます。

――最後に今後の投資戦略を考える上で、注意点などがあれば伺えますか。

需要や企業業績は二極化していく可能性が高い上、市場全体で見ればコロナ禍で縮小する産業のウエートが小さくないため、投資対象を厳しく選別する必要が高まるでしょう。先ほどの成長が期待できる領域の企業の多くは、業績が安定して伸びていくと考えられるものの、足元の株価はやや買われ過ぎている感もあるので、投資タイミングは慎重に見極めたいところです。その意味では、市場全体に投資するインデックスファンドよりも、ファンドマネジャーが投資先を厳選するアクティブファンドが注目されるのではないでしょうか。

家計も厳しい状況が続くかもしれません。短期的には給付金の恩恵もあるでしょうが、賃金にマイナス影響が表れるのは来年度の春闘後なので、最悪期は1年先ということになります。また、たとえ経済が回復しても、拙速な増税案が浮上して台無しになる可能性も否定できません。

ただ、それでも日本に1000兆円もの現預金が眠っている事実に変わりはありません。マネーのグローバル化が進み、モノ言う株主の登場もあって日本企業は配当などの株主還元の強化を迫られています。その一方で賃金は伸びず、経済成長の恩恵は労働収入だけでは得られにくくなっている。株などのリスク資産を保有しないと豊かになるのが難しい時代が来ていることは、改めて強調してよいと思っています。