ポートフォリオの確認頻度は「年1回」が目安
また、ほぼフルサービスに近い形で全面的に運用をおまかせできる投資信託として、ターゲットイヤーファンドが取り上げられることもある。ターゲットイヤーファンドとは、2030年や2040年など特定の年を「ゴール」に設定して運用される投資信託のこと。投資家が現役をリタイアする年を「ゴール」(=ターゲットイヤー)に置き換えて考えると分かりやすい。このゴールに近づくにつれて株式の比率を少しずつ下げる一方、債券の比率を引き上げ、保守的な運用にシフトさせていくのである。
こうしたターゲットイヤー型の商品性は、理論上は老後資金の準備に適している。しかし、主要先進国の債券利回りが限りなくゼロに近い水準まで低下した今、投資妙味の薄い債券の組入比率を機械的に高めていくという運用手法には不安も残る。かつての投資セオリーが通用しない、現在の特異な投資環境においては、第4回で取り上げた、目標となるリスク水準を掲げて機動的な運用を行う可変配分型のバランスファンドのほうが時代に合っていると言えるだろう。
ターゲットイヤー型も可変配分型のバランスファンドも、あくまでも個別の投資信託なので、ファンドを選んだり、組み合わせたりする部分については、投資一任型よりも自由度が高い。投資一任型がフルサービス型なら、こうした個別のバランスファンドは、セミフルサービスといったところだろうか。
いずれも長期投資が前提であることに変わりはないものの、保有ファンドの運用成績を一定周期で確認するとともに、ライフプランの変更に応じたファンドの見直しは行ったほうが良い。前述のターゲットイヤー型のように、時代の流れとともにファンドを取り巻く運用環境が変わることもあるためだ。
なお、自身の保有するファンド群(ポートフォリオ)を確認する頻度については、心理学的知見を経済学に取り入れた、行動経済学という学問分野で興味深い研究がある。
2017年にノーベル経済学賞を受賞した行動経済学者のリチャード・セイラーが行った実験によれば、人はポートフォリオのリターンを見る回数が多いほど、リスクを取りにいこうとしなくなるという。
ポートフォリオを頻繁に確認すればするほど、どうしても損失に直面する確率は高くなる。結果として、目先の損失を回避しようとするあまり、株式の配分を減らすなど、株式投資で有利に働く長期投資という原理原則から外れた投資行動を取ってしまうのである。つまり、頻繁に確認しすぎるのも良くないのである。
セイラーと共同研究者のシュロモ・ベナルチが発表した「近視眼的損失回避」論文では、人が株式と債券に対して中立なスタンスを取りたい(株式と債券に50%ずつ投資したい)と思うポートフォリオの確認頻度として、「年1回」という数値が示されている。この理論にならい、自身の誕生日など1年に1回、覚えやすい日を決めてポートフォリオを確認するのも良いだろう。