なぜフラッシュライト・キャピタルはセコムを狙ったのか
FCPの論点は3つに集約できる。海外目標の扱いが薄れていること、最大の関連会社への関与が不十分であること、成長力で海外の競合に後れを取っていることだ。
この点に関してセコム側の位置づけを確認したい。2026年3月期の有価証券報告書(有報)では、海外事業の強化を優先課題に挙げ、M&Aの実行を掲げている。2025年10月には、データセンターを運営する欧米企業などを顧客に持つ警備システム構築会社、AVTEL Holdings Pte. Ltd.を完全子会社化した。2026年5月に策定した「2040年ビジョン」でも、世界に「先回りの安心」を届けるとし、ロードマップ2027に引き続き取り組むとしている。
FCPが問題にするのは開示の変化だ。2023年の統合報告書「セコムレポート」では、社長メッセージにおいて海外売上高比率10%の目標と実績が述べられていた。一方で、吉田保幸社長の体制になってからの統合報告書では、社長メッセージに海外に関する数値目標は出てこない。2025年版では社外取締役2名がグローバル展開の強化や、海外子会社とのガバナンス差異の是正に触れているが、FCPはこの発言を海外事業の課題が経営陣に十分に認識されていない裏づけとして引き合いに出している。
象徴がS-1だ。売上高は3,040億円で、セコムの24%に相当し、同社の他の海外子会社の合計を上回る。それでも韓国での市場シェアは、2015年の65.0%から2025年の50.9%へ下がり、2026年上半期に初めて50%を割った。セコムレポートに「S-1」の文字が出てくるのは3回で、いずれも会社紹介の域を出ない。
FCPは、成長力を比較する競合としてスウェーデン発で欧州を中心に住宅向け警備を手がけるVerisureを挙げている。売上高はセコムが上回るが、過去10年の年平均成長率はセコム3.4%に対しVerisureは13.6%。EBITDAマージンは2025年時点で、セコム19.2%に対しVerisureは36.8%、海外売上高比率はセコム5.4%に対しVerisureは93%である。
FCPは、過去10年の成長率が続けば、Verisureは2032年にも売上でセコムを上回ると試算する。EV/EBITDAは、企業価値(時価総額に純有利子負債などを加えたもの)をEBITDAで割った倍率で、本業の稼ぎの何年分で企業が評価されているかを表す。セコムは6.6倍、Verisureは9.9倍と、市場の評価にも差がある(2026年9月25日時点、公開市場データに基づくFCP 分析)。なお、FCPの比較に対するセコムの公式見解は、本稿執筆時点で確認できていない。
