好業績でありながら株価が急落し、PER12〜13倍台まで低下したスーパーゼネコン4社。人手不足の壁や業績ピークアウト懸念が広がる一方、プロの投資家は「過度な売られ過ぎ」と判断し、反転の機会と見ているのでしょうか。それとも…。今後の成長を左右するカギとなる見落とせない視点について、つばめ投資顧問のアナリストの元村浩之さんの解説をお届けします。

※本記事は10/14につばめ投資顧問にて公開された「建設株が大幅下落!その理由と投資チャンスを探る(鹿島建設・大林組・大成建設・清水建設)」を編集の上、元村氏による特別コメントを付して掲載しております。

業績と株価の関係性が一変 建設業が迎えた構造転換

建設業界で起きている大きな変化は、ゼネコンが「安くても仕事を取る」立場から、「利益の出る仕事を選ぶ」立場に変わってきたことだと思います。

かつては公共工事の減少などで競争が厳しく、利益が少なくても受注を優先する時代がありました。しかし、2014年の法改正で公共工事の適正な利益を確保する考え方が強まり、その後は人手不足が深刻化。2024年には残業時間の上限規制も始まり、引き受けられる工事量が限られるなかで、無理な価格や工期の仕事を避ける「選別受注」が広がっています。

床面積が減る一方で建設投資額が増えているのも、資材・人件費の上昇や建物の高機能化に加え、こうした変化が背景にあると考えます。物価が落ち着けば投資額の伸びは鈍るでしょうが、人手不足は簡単には解消せず、以前のような安値競争には戻りにくいと思います。

ただし、選別受注によって利益率が改善しても、好業績が続くとは限りません。工事中の資材費や人件費の上昇を工事代金に反映する「スライド条項」という仕組みはありますが、コストの上昇分をすべて発注者に負担してもらえるわけではありません。急激なインフレが再び起これば、ゼネコン側がコスト増を負担し、利益が圧迫される可能性もあります。

そのうえで、中長期的な成長を左右するのは、限られた人手でどこまで施工量を増やせるかです。AIやデジタル技術の活用によって、従業員1人当たりの施工高を高める余地はありますが、建設現場は場所や工事内容によって条件が異なるため、効率化には時間がかかるでしょう。

もう一つの成長手段がM&A(企業買収)です。技術者や専門工事会社を取り込んで施工能力を拡大するだけでなく、買収先の工事管理や資材調達を効率化し、買収前よりも多くの利益を生み出せるかが重要になります。清水建設がM&A資金などの確保を目的に1,000億円の転換社債を発行したのも、こうした成長への意欲を示す一例でしょう。

今後は、選別受注による利益率の改善余地とともに、1人当たり施工高の向上やM&Aによる施工能力の拡大が、実際にどれほどの成果につながるのかに注目したいと思います。