薄利で受注する時代から利益を確保する時代へ

そもそも、なぜゼネコンの利益率は改善してきたのでしょうか。

以前は、いかに受注高を増やすかが重視されていました。

発注者側の力が強く、仕事を獲得するために利益が薄くても受注するという状況があったわけです。

そこから、まず土木の分野で変化が進みました。

背景にあるのが、品確法、正式には「公共工事の品質確保の促進に関する法律」です。

公共工事の品質を確保するため、適切な価格で受注する方向へと環境が整えられ、ゼネコンにとって利益を確保しやすい案件が増えてきました。

土木では数年前から収益性の改善が進んだ一方、建築では発注者が民間企業となるため、薄利の状況からなかなか抜け出せませんでした。

しかし、施工する側の人手や余力が足りなくなると、従来の条件では引き受けられなくなります。

その結果、民間の建築でも、土木と同じように利益を確保できる請負体制が整ってきました。

先に土木で利益率が上がり、その後、民間建築でも改善が進みました。

今は、その両方が業績を支えている段階といえます。

コスト上昇を転嫁するスライド条項

建設会社というと、建材価格や人件費の上昇が利益を圧迫するのではないか、と考える方もいるでしょう。

ただ、足元では、そのリスクに対応する契約も増えています。

その一つが「スライド条項」です。

建設工事は、受注してから完成するまでに2〜3年かかることがあります。

その間に建材などの価格が上がれば、当初の想定よりもコストが膨らみます。

こうしたコスト増を発注者に転嫁できるようにするのが、スライド条項を盛り込んだ契約です。

費用が増えても、すべてを施工会社が負担するとは限らない仕組みになってきています。

もちろん案件によって条件は異なりますが、コスト上昇がそのまま業績への打撃になると、過度に心配する必要は小さくなっていると考えられます。

ゼネコン側も、限られた人手を使うのであれば、利益を確保しやすく、管理もしやすい案件を選ぶようになりました。

発注者が優位だった構造から、供給する側が有利な条件を選べる構造へと変わってきたのです。

利益率の改善が止まったらどうなるのか

条件がよくなり、コストも転嫁できるのであれば、ますます業績はよくなりそうです。

それでも懸念されているのは、利益率の改善がどこまで続くのかという点です。

これまでは、受注量が大きく増えなくても、利益の出やすい案件を選ぶことで業績を伸ばせました。

売上の拡大よりも、利益率の上昇が利益成長を支えてきたわけです。

しかし、その改善が頭打ちになれば、次は受注する量を増やす必要があります。

ところが、人手不足という壁があるため、簡単には増やせません。

利益率を上げる余地が小さくなる一方、受注量も増やせないという懸念が、足元の株価下落の大きな要因ではないかと考えられます。

自社開発には金利上昇の影響もある

さらに利益の出る案件を手掛ける方法として、自社開発も考えられます。

他社から工事を請け負うだけでなく、自社でビルを建て、完成後に売却したり、自ら運用したりする”不動産デベロッパー”に近い事業を、ゼネコン各社も行っています。

ただし、こちらには金利上昇という問題があります。

自社でビルを建てるには、必要な資金を自ら調達しなければなりません。

調達時の金利が上がれば、その分だけ利益の幅は小さくなります。

不動産会社の株価も下がり、マンションが売れにくくなる状況もあるなかで、自社開発へ踏み出せば成長できると、単純にはいえません。

今の業績はよくても、ここから先の成長路線をどう描くのかという道筋が見えにくくなっていることが、スーパーゼネコンの置かれた状況だと考えられます。

次の成長を左右する契約力と案件マネジメント

こうした課題に対して、各社はどのように対応しているのでしょうか。

共通して見られるのは、案件を選ぶ力に加え、「契約力」を磨く動きです。

コストが増えたときに発注者へ価格転嫁できるか、想定外の事態が発生したときに工期を調整できるか、設計変更や追加工事が生じた場合、その費用を追加で請求できるか、案件を受ける段階で、こうした条件を丁寧に詰めていきます。

どの仕事を受けるかだけでなく、どのような契約で引き受けるかが、利益を左右するからです。

これは、非常に高度な能力が求められる仕事です。

一つひとつのプロジェクトで、優秀なマネージャーが適切な条件をつくり上げ、利益を確保できる契約を結ぶことができる会社とできない会社では、差が開いていく可能性があります。

ただし、投資家にとって難しいのは、契約の細部が外からは見えにくいことです。

案件ごとに内容も違うため、その巧拙を事前に判断するのは簡単ではありません。

実績として表れる数字を、後から確かめる必要があります。

一方、どのような施工案件を受けているかという案件構成は、開示資料から確認できる部分もあります。

各社は、想定外の問題を抑えやすい、自分たちの得意分野の案件を積み重ねています。

そこでノウハウを蓄積し、案件を管理する力を高めているのです。