モーニングスター提供のデータに基づいた2026年9月の純流入額(推計値)直近1カ月ランキングでトップは「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)(愛称:オルカン)」で変わらなかったものの、前月第2位だった「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」が第3位に後退し、前月第3位だった「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)(愛称:世界のベスト)」が第2位に上がった。第4位は「フィデリティ・グロース・オポチュニティ・ファンドD(毎月・予想分配・ヘッジ無)」、第5位は「WCM 世界成長株厳選ファンド(予想分配金提示型)」で前月と同じだった。一方、第11位に前月第16位だった「eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)」が、第12位には前月第17位だった「iFreeNEXT FANG+インデックス」が浮上し、第13位にはトップ20圏外から「GSグローバル(除く米国)割安高配当株式ファンド年1回決算コース」がランクインした。
新NISAで人気が爆発した「オルカン」
純流入額で第2位の座を明け渡した「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」(設定は三菱UFJアセットマネジメント)は、純流入額が7月は2170億円だったものが、8月は2016億円に減額し、9月は1844億円と2000億円の大台を割れてしまった。「オルカン」(三菱UFJアセット)とともに常に資金流入額でトップ2にあった「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」が他のファンドに、しかも、アクティブ・ファンドに純流入額で抜かれたことは、投資信託市場の転換点として意識されそうだ。
「オルカン」と「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」はつみたて投資の王道銘柄として定着し、特に新NISAがスタートした2024年1月からは月次の資金流入額が2000億円を超える頭抜けた存在として投信市場に君臨してきた。「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の資金流入額(月次)のピークは2025年1月の約4050億円(「オルカン」のピークは2026年1月の約5890億円)。2023年12月に月次流入額で「オルカン」が「S&P500」を上回るまでは、「S&P500」が一貫して「オルカン」を上回る資金流入額だったが、2024年1月に新NISAが始まると「オルカン」が月間で約3439億円の資金流入を記録し、「S&P500」の約2091億円と格段の差がついた。その後、徐々に「オルカン」の優位が定着することになった。
また、旧NISAの「つみたてNISA」が始まった2018年1月以来、基本的に市場は右肩上がりで上昇を続けたこともあって、資金流入とともに基準価額の上昇による資産評価額の拡大が続いた結果、「オルカン」は純資産総額が14兆円に迫る巨大ファンドに成長し、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」も約13兆円のファンドになった。個別ファンドの純資産総額が10兆円を超えることは画期的なことだ。
「世界のベスト」が浮上した理由は?
一方、「世界のベスト(毎月決算型)」(インベスコ・アセット・マネジメント)の純流入額は7月の1587億円から8月は1813億円、9月には2558億円と過去最大規模に拡大した。「オルカン」や「S&P500」と比較すると、これまでの資金流入規模は大きくないものの、2023年頃から月次の資金流入規模が500億円を超えて拡大し、新NISAのスタートとともに月間500億円超の資金流入額が定着。2025年5月以降に月次流入額が1000億円以上に拡大し、2026年6月からは月間1500億円以上の流入額になっている。純資産総額は4兆円を超えている。
純資金流入額ランキングで、「S&P500」より「オルカン」、そして、「S&P500」より「世界のベスト」へとランキングの順位が移動していったのは、同じような理由によると考えられる。「分散」だ。「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は米国の大型株のみを投資対象としたファンドだ。投資する銘柄数は500銘柄と決して少なくはないのだが、それらはすべて米国企業だ。もちろん、米国企業といってもアップルやマイクロソフトなど世界の市場を相手に事業展開する企業も少なくないため、企業業績の推移は必ずしも米国経済の動きに連動するわけではない。それが米国株式の強みではあるのだが、そうはいっても、「米国企業」という縛りがある分、全世界を対象として投資先が分散されている「オルカン」や「世界のベスト」と比較すると「米国」というカントリーリスクが大きい。
一国に集中した投資をしていると、日本の「失われた30年」といわれるような長期の低迷期を経験しかねない。特に、10年、20年という長期の運用を考える場合は、リスク管理が重要になる。米国はイランとの間で戦争を行うことで大量のミサイルや弾薬を使っているがその見返りは見通しにくく、かつ、足元では原油価格の高騰によって国民生活に負担を強いている。これが将来の米国経済に与える悪影響を考えなければならない。アクティブ・ファンドの「世界のベスト」であれば、今後の成長に疑問が生じる企業への投資を行わず、より成長が確実な企業に投資を集中するなど自在に運用ポートフォリオを変更することができる。
これまで中長期投資にふさわしいファンドとして運用コスト(信託報酬)が低いインデックス・ファンドが選好されてきた。アクティブ・ファンドである「世界のベスト」が第2位の人気ファンドになったことは、コストだけではなく「リスク管理」の観点でもファンドを評価する動きが広がっていることを感じさせる。
執筆/ライター・記者 徳永 浩

