年金分割は「夫の年金を半分もらえる制度」ではない

今回の由美子さんのケースは、年金分割や財産分与について誤解したまま話を進めてしまったことが問題です。

まず押さえておきたいのが年金分割の仕組みで、離婚時の年金分割には、大きく分けて「合意分割」と「3号分割」があります。合意分割は、婚姻期間中の夫婦双方の厚生年金記録を分割する制度です。

合意分割の場合、夫婦の合意によって分割する金額を決めることになり、話し合いがまとまらない場合には家庭裁判所の調停や審判などで割合を決めてもらうこともできます。

一方、3号分割は、2008年4月1日以降の第3号被保険者期間について、相手の合意なしに厚生年金記録を2分の1ずつ分割できる制度です。

今回の由美子さんは、長年会社員として厚生年金に加入していたため、第3号被保険者ではありませんので単純に夫の厚生年金の半分を受け取れるわけではありません。

そして、妻自身の厚生年金加入歴や婚姻期間によっては、今回の由美子さんのように仮に50%の分割が実現したとしても、思っていたよりも金額が少なくなってしまう場合もあります。

なお、2026年4月1日以降の離婚については、年金分割の請求期限が原則として離婚から5年に延長されています。離婚した後でも請求できる場合があるため、期限を含めて確認することが重要です。

また、熟年離婚を考える際、年金分割によっていくら増えるのかはもちろん重要なポイントですが、それだけで離婚後の生活が成り立つかどうかを判断することはできません。

由美子さんの場合、一人で生活していくことができる程度の収入はありましたので、もし離婚を考えるのであればもっと早くに決断をしていても良かったでしょう。

問題は、離婚しても生活が成り立つかどうかであり、いくら財産や年金の分割を受けられるかではありません。

離婚時にそういった制度を調べることについては大事ですが、それも含めて離婚後の収入と支出、リタイア後に一人で生活が成り立つにはどのように働き方を考え支出をコントロールしていくのか、シミュレーションし数字で判断、行動していくことが最も重要なことです。

本当に必要なのは「一人で生きていく設計」

今回の由美子さんは、夫の定年退職を待って離婚を切り出しましたが、制度についての誤解や、離婚後の生活設計の重要な点を十分に検討しないまま離婚という決断をしたことが問題でした。

離婚時には様々な制度があり、また公的年金制度は複雑で理解しにくいものです。これらの制度や財産分与については離婚問題に詳しい弁護士等に相談しながら正しい制度を知ることが大事です。

また最も重要なことは自分一人で生きていくための生活設計です。離婚時の制度はそれを支える手段の一つではありますが、目的はあくまで自分らしくこれからの人生を生きるための生活設計です。

自分自身で生きていくことができる計画が立てられるのであれば、これらの制度に頼ることなく早期に離婚を決断しそれぞれの道を歩んだ方が双方の幸せとも言えます。


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