<前編のあらすじ>

地方都市の持ち家で一人暮らしをする田中和子さん(64歳・仮名)。20年前に夫を亡くし、遺族年金と生命保険金を頼りに3人の子どもを育て上げました。

現在は派遣社員としての給与約250万円と、遺族厚生年金約95万円で暮らしています。65歳になれば自分の老齢基礎年金が上乗せされ、年金収入は年間175万円以上になる。そう考えて65歳での退職を決めた和子さんは、誕生月を前に届いた年金請求書を手に、年金事務所へ相談に訪れました。

●前編:「夫の遺族年金、ずっと同じ額だと思ってた……」65歳でのリタイアを心待ちにしていた派遣社員に、誕生月を前に届いた"年金請求書" 

「老齢基礎年金がそのまま上乗せされるんじゃないの?」

そこで説明を受けたのは、老齢基礎年金と遺族厚生年金などを合わせた年金額が年間約115万円程度という金額だったのです。

以前の年間95万円から増えたのは、わずか20万円ほどで115万円程度とのことでした。

「そんな……。老齢基礎年金がそのまま上乗せされるんじゃないの?」

納得できなかった和子さんは、職員を問いただしたのでした。

そこで初めて聞いたのが、「中高齢寡婦加算」という制度でした。

担当者から説明を受け、和子さんは驚きました。

実は、これまで遺族厚生年金として受け取っていた年間約95万円のうち、約63万円は中高齢寡婦加算だったのです。

中高齢寡婦加算は、一定の条件を満たす妻が40歳から65歳になるまでの間、遺族厚生年金に上乗せされて支給されるものですが、65歳になると支給が終了、その後に本人の老齢基礎年金を受け取れるようになる仕組みです。

和子さんの場合は、遺族厚生年金が約32万円、それに加えて中高齢寡婦加算が63万円程度支払われていたので、老齢基礎年金が給付されても20万円程度上乗せになるだけだったのです。

「夫の遺族厚生年金は、ずっと同じ金額をもらえると思っていたのに……。これじゃ派遣はまだ辞められないな……。」

和子さんはがっくりと肩を落としました。

「これでは生活していけない……」

仕事を辞めてのんびりパートでもしながらリタイア生活をと考えていた和子さんでしたが、リタイア直前で仕事を続けることにしたのでした。

資産と呼べるものは昔お付き合いで契約した65歳から10年間、毎年60万円が受け取れる個人年金保険と、300万円あるかどうかという預金くらい。

いつになったらリタイアできるのか、不安になる和子さんでした。