「お金と向き合うこと」は「自らの人生や家族と向き合うこと」。資産形成だけにとどまらない、一人ひとりの人生の物語がきっとあるはず……。このたびFinaseeでは公募企画「あなたの『投資』と人生、教えてください!」を実施しました。全国から寄せられた投資にまつわる人生のさまざまな経験や思いが綴られた投稿の中から選ばれたニックネームSIN・TORUさん(男性、関西地方在住)の体験談をお届けします。
FX自動売買の甘い罠(わな)と落ちていく底なし沼
投資との出会いは、新卒で入った商品先物取引会社だった。社員の多くが自社の金積立をしていた。
「まあ、そういうものか」
特に深く考えることもなく、流れに乗った。毎月同じ日に、同じ金額が引かれていく。
「退屈だな」
当時の私は何となく、そう思っていた。
そんな私が、退屈とは真逆の世界に飛び込んだのは45歳のときだった。FX(外国為替証拠金取引)の自動売買に手を出したのだ。
「これで、もう未来はバラ色やん!」
プログラムが勝ち方そのものを教えてくれるような気がして、バックテストの右肩上がりのグラフを眺めてはニヤニヤしていた。まだ1円も増えていないのに、増えた気持ちだけが先走る。
「宝くじで1億円当たったら」
そんな気持ちに似ている。妄想は、それはそれで楽しかった。
しかし現実の相場は、右肩上がりのグラフにはならなかった。むしろ口座は、右肩下がりのグラフを芸術的なまでに美しく描いてくれた。
「今度こそ取り返してみせる」
損失が出るたびに、そう決意する。
「設定が悪かった」「通貨ペアが悪かった」「急変動さえなければ」
言い訳はいくらでも出てくるが、そんなことを言っているうちは、まだ止められない。気づけばスマホを朝昼晩とのぞき込み、たばこの本数が増えた。そして強制ロスカットで絶望する。
最終的な損失は数百万円。相続したお金まで、溶かしてしまった。
