30年の遠回り、地獄の果てにつかんだ希望

仕事をした。ただ、それだけだ。目の前の仕事を片づけ、入ってきたお金から生活費を引いて、残りを貯金する。増える速度は驚くほど遅い。でも、確実に増えていった。

そして気づいた。「お金が減らない」というだけで、人はこんなにも心が穏やかになれるのか、と。

現在、私の投資スタイルはすっかり様変わりした。NISAでの毎月の積立と個別株の単元未満株(ミニ株)投資を少々。かつてのFXのように一喜一憂することのないこの堅実なスタイルが、今の自分にはとても心地よい。

20代のころ退屈だと思っていた、「同じ日に同じ金額が引かれる」というあの速度に、結局、戻ってきた。30年近くかけて、私はその退屈の正体が「安心」だったとようやく知った。親が積んでいたのも、たぶん、この速度だったのだろう。

叶えたい夢は派手ではない。

年金だけでは心許ない老後。「ひもじい思いをしたくない」「食べたいものを値段で決めない程度の余裕がほしい」「友人に食事に誘われたとき、“お金がないから”と断りたくない」

そして少し余裕ができたら。「近場でいいから旅をしたい」「日帰りの温泉でも、数駅先の土地でもいい。季節ごとに列車に乗って、少しずつ全国を回ってみたい」

全国を回ると言いながら、たぶん最初は2駅先だ。「それでいい」と思っている。

大きな一発逆転を狙い、手痛い遠回りもした。地道な積み重ねの価値をようやく知った今の私なら、その2駅先の景色も、きっと心から楽しめるはずだ。