「損失は数百万円」、地獄の底で知った本当の恐怖
本当に、心から、親に謝りたい。
あれは口座に入っているただの数字ではなかった。親が何十年もかけて、毎月の暮らしから、少しずつ削って残してくれたお金だ。決して、あぶく銭ではない。ゆっくりと、退屈な速度で積み上げられたお金だった。それを私は、ものの数カ月で溶かしてしまった。あの時、私が失ったのは――金額ではなく、親がかけた時間の方だったのだ。
投資で損をすると、損失そのものよりも「元の金額まで戻したい」という感情が判断を狂わせる。「お金がない」という不安は、人の判断能力を奪う。不安だから増やそうとする。損をする。さらに不安になる。そして取り返そうとして、もっと危険な判断をする――。
ドツボとは穴の深さではなく、穴を掘る手が止まらなくなることを言うのだと思う。
――預金がこのまま減り続ければ、いつかゼロになる――。
そう想像したとき、ようやく現実的な恐怖が襲ってきた。そして皮肉なことに、この期に及んでようやく、ごく当たり前の事実に気づいた。
「無理に取り返そうとするより、仕事をして稼ぐ方がお金は確実に増える」
45歳の発見としては、ずいぶんと遅い。小学生でも知っていることだ。
今なら確実に言える。あの時の私の肩をつかんで、こう言ってやりたい。
「おい、目を覚ませ! 取り返そうとするな。まず冷静になれ。あと今すぐ、そのスマホを置け!」、と。
そこから私がしたことは、拍子抜けするほど地味だった。
