家事の偏りに気づき始める実花

遅れて洗面所へ向かった実花は、扉越しに聞こえるシャワーの音を聞きながら、洗濯機に衣類を放り込む。拓哉と入れ違いに風呂に入り、上がったついでに浴槽を洗った。ドライヤーで髪を乾かし終えるころ、室内乾燥機がここからはお前の仕事だと音を鳴らす。

「まだ寝ないの? なんか手伝おうか?」

拓哉が顔を覗かせたが、実花は首を横に振った。

「ううん。あと洗濯物、たたむだけだから」

ついそう言ってしまったが、じゃあ、おやすみと言い残して寝室に向かう拓哉の背中を眺めながら、実花は少しの後悔をタオルやTシャツに折りこんで、ため息をついた。

 

   ◇

 

次の日の夜も、家事を終えた実花がようやく一息ついたのは、10時を少し過ぎたころだった。リビングへ戻ると、ソファに寝そべっていた拓哉があくびをしながら身体を起こした。

「お疲れ。待ってたよ。あれ見よう」

2人で並んで腰を下ろし、録画しておいたドラマを再生する。実花は背もたれに体を預け、肩の力を抜いた。しばらくすると画面の中で、飲食店で働く主人公が閉店後の厨房に立ち、山のように積まれた皿を次々と洗い始めた。「そうそう、冬は手が痛くなるんだよね」とその様子を眺めていると、拓哉が何気なく口にした。

「俺、いくら金もらっても、こんなふうに毎日皿洗いするなんて絶対嫌だな」

実花は一瞬、聞き間違えたのかと思った。

「私は毎日、それをただでやってるんだけど」

「……あ」

一瞬で拓哉の表情が固まった。すぐに自分の失言に気づいたらしい。