清美は仕事を終えて自宅マンションに帰ると晩ご飯を作り始めた。自動車部品メーカーに勤めている夫の道明は今日は帰りが遅くなると言っていたので、今夜は少し手の込んだものを作ってみてもいいだろう。
8年前、清美は道明と結婚した。清美の仕事の都合で夫婦の姓を横田姓にすることにも、道明は了承してくれた。お互いに30代半ばを過ぎたが、今も変わらず幸せな暮らしが続いている。
穏やかな夫婦生活と義母の存在
味噌汁を温めていると清美の携帯が鳴り出した。清美は火を止めて携帯を取ると、思わず顔をしかめた。電話の相手は義母のひろ子だった。
「はい、お久しぶりです」
「清美さん、お盆のことだけど、どうなってるのか教えてくれる? 道明に連絡したんだけど、あの子ったら全然返事をくれなくてね」
毎年、清美たちはお盆になると義実家であるひろ子の家に帰省することになっていた。
「ああ、その話ですね。それなら道明さんが12日から休みなので、13日に伺おうかと話しています」
「そう。じゃあ待ってるわね。あと、ご近所さんたちに見られるかもしれないから、ちゃんとそれなりの身なりで来てちょうだいね。私たちに恥をかかすようなことだけはしないでよ」
「……はい、気をつけます」
清美はぐっと感情を抑えて返事をした。そこで電話は切れ、清美は大きく息を吐き出した。
短時間の電話だったが、仕事よりもぐったりした気がした。
