予定全滅で愛車をめぐる衝突

その後、応急的にエンジンはかかったが、そのまま走行を続けることは危険だと言われた。バッテリー交換と発電機の確認が必要らしい。

仕方なく2人は車を近くの整備工場へ預け、レンタカーを借りることにした。ようやく諸々の手続きを済ませたのは、夕方近くになってからだった。予定していた場所には、もうどこにも寄れない。

「車のせいで、せっかくの旅行が台無しね」

志桜里はレンタカー屋を出たところで、冷たく智輝に言った。

「この猛暑のせいだよ」

「暑いのは最初から分かってたことでしょう。前もってきちんと対策してたら、こんなことにはならなかったわ」

「まあ、それは、そうだけど……」

「わざわざ私が運転できない車を選んだのも、結局、最初から自分が楽しむことしか考えてなかったんじゃないの?」

「でも、買い替えることは話したし、志桜里も任せるって――」

智輝はそこまで言って、口を閉じた。

「いや、悪かった。遠出するなら、もっと念入りに確認しておくべきだった」

短い謝罪が、かえって志桜里の苛立ちを強めた。

「いくら見た目が格好良くても、何の役にも立たなかったわね」

言い過ぎだと気づいたときには、智輝はもうすっかり肩を落としていた。

2人はそのまま宿へ向かった。智輝は黙って前を見つめ、志桜里も窓の外へ顔を向けたまま、口を開かなかった。穏やかなエンジン音が、生まれてしまった2人の距離と沈黙をよりいっそう引き立てた。