「たった7万の年金で暮らしていけるかよ!」

「お客様、失礼ですが、そのバッグからはみ出たビニール袋は、一体何でしょうか」

永瀬藍子はゆっくり、かつ、できるだけ毅然とした態度で言った。

「何だあ? 何か文句でもあんのか?」

ニットキャップの男がそう言って永瀬藍子を睨む。

ただ、永瀬藍子はひるまなかった。

「いえ、ですが、お客様がビニール袋を大量に取ったというなら、少々話が違ってくるのではと思いまして」

「話が違う、だと?」ニットキャップの男が声をあらげる。

「当店では、ビニール袋は1人1枚までと決まっておりますので」

「ざけんじゃねえ!」

ニットキャップの男が叫ぶ。

「んなこと俺だって分かってるよ! けど、あんたらどうせがっぽり儲けてるだろ? こんなでかいスーパーなんだからよ。それに比べて、こっちは年金生活なんだ、かつかつなんだよ。だからビニール袋くらい恵んでくれたっていいだろ! そうでもしなきゃ、たった7万の年金で暮らしていけるかよ!」

「お気持ちはお察ししますが、従業員を怒鳴りつけるのはやめてください」

永瀬藍子がきっぱりと言った。

「当然の報いだろ。そいつ俺のことを馬鹿にしたからよ。たんまり年金もらってるんだろって言ったんだからな!」

ニットキャップの男がまっすぐ佐藤敏雄を指さす。

ただ、佐藤敏雄は首を左右に振った。