5年越しに告げた本心

義之に離婚を申し出たのは美咲に打ち明けてから3週間後だった。休日にソファでゴルフ中継を見ていた義之に絵美は離婚届を差し出した。

「あなた、これにサインをしてほしいの」

絵美はそう言いながら離婚届を義之に見せた。離婚届を見た義之は固まり、それから怒りのような表情をこちらに向けてきた。

「急に何だよ……?」

「離婚をしたいの」

義之は大きなため息をついて手で顔を押さえた。

「何でだよ……?」

「自分でも分かってるでしょう」

「……もう不倫のことは許してくれたんじゃないのかよ?」

絵美は義之を睨み付けた。

「いつ私が許したなんて言った? 美咲を育てるために準備する必要があったから、“今は”離婚はしないと言っただけ」

それから、絵美は困惑している義之に長年抱えていた胸の内をぶちまけた。義之は絵美が言葉を重ねるたびにその重さにつぶされるように萎んでいった。

「……悪かったよ。これからは心を入れ替えてちゃんとやる。だから離婚だけはしないでくれ」

「……そんな言葉、誰が信用すると思う? もう私はあなたと離婚するって決めてるの」

絵美の気持ちは変わらなかった。

母娘3代で見えた未来

すでに新しいマンションも見つけていたこともあり、離婚してからすぐに絵美は美咲と2人で生活を始めた。中学にも絵画教室にも通える場所を選んでいたので、美咲は特に変わった様子もなく楽しそうに生活をしてくれていた。

そんなある日、敦子から家に行って良いかと連絡が来た。絵美が了承すると、1時間もしないうちに敦子が新居にやってきた。

「どうしたの急に?」

「お父さんに離婚するって言ったの。そしたら大ゲンカになって家を飛び出して来ちゃった」

気恥ずかしそうに話す敦子だったが、その顔はスッキリしているように見えた。絵美はそんな敦子を見て顔をほころばせた。

「じゃあ、うちに泊まっていって。美咲もきっと喜ぶわ」

「ごめんね。少し間を開けたらまた話をするつもりだから」

「いいのよ、気にしないで。何ならこのまま3人で暮らしたっていいんだから」

母娘3代、仲良く暮らすのも悪くない。絵美が笑いかけると、敦子はほっとしたように微笑んだ。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。