「特別委員会の設置」というシグナルが招いた価格競争

株価を本格的に押し上げる決定打となったのが、「特別委員会の設置」だ。会社側が独立社外取締役のみで構成される委員会を設け、複数のプライベートエクイティ(PE)ファンド※(注:未公開株式に投資するファンド)から買収提案を受け付ける姿勢を示したことで、単独交渉ではなく「市場原理に基づいた競争入札」への道が開かれた。

 
出所:富士ソフト資料よりFinasee編集部作成
 

上表が示すとおり、特別委員会が設置され競争入札が始まった2024年8月の時点でも、最終価格との間にはまだ30%超の上昇余地が残されていた。結果としてKKRとベインキャピタルが競合し、TOB価格は最終的に9,850円へと引き上げられた。特別委員会の設置は、「経営陣の対話モードへの移行」と「プレミアム上乗せ」を早期に告げる強力な先行指標として機能したとみられる。

投資家として何を見るべきか

富士ソフトとアクティビストの攻防が残した教訓を3点に絞ると、以下のとおりだ。 

・低ROEの原因が過剰資産にある銘柄を見逃さない 
・特別委員会の設置を株価上昇(プレミアム拡大)のシグナルとして捉える 
・過剰資本の解消額からTOB価格の上昇余地を試算する

「含み益が大きく、ROEが低い」という理由から企業に投資をする際、個人投資家が確認すべきポイントは3つだ。①有形固定資産比率などから低ROEの要因が本業の不調ではなく過剰資産にあるとみられるか、②M&Aプロセスにおいて特別委員会が実質的に機能し、複数候補への打診を行っているか、③アクティビストが是正を求める過剰資本の具体的な規模はいくらか。

この視点を持つことで、自律的に変革を進めている銘柄か、アクティビストら外部の働きかけによって変革が促される銘柄かを早期に見分けるヒントになる。