個人投資家が「バリュエーションの歪み」を見抜き、銘柄選定に活かす視点を養う新連載。今回は、アクティビストの参入から最終的に株価が約3.8倍へと大化けした富士ソフトの非公開化事例を検証する。アクティビストはどこに目をつけ、市場の競争をどう引き出したのか。その攻防のプロセスを解剖することで、「含み益を抱える低ROE銘柄」から次のターゲットを発掘する条件が見えてくる。
約3.8倍の株価上昇を生んだ「過剰資本」へのメス
富士ソフトの非公開化は、アクティビストがいかにして企業の潜在価値を引き出し、株価を劇的に動かすかを示す教科書的な案件となったといえよう。同社の株価は、アクティビスト参入前の約2,560円から、最終的なTOB価格である9,850円へと約3.8倍に上昇した。引き金を引いたのは、「3Dインベストメント・パートナーズ(3DIP)」の介入だった。
投資家や市場が注目したのは、3DIPが突きつけた「約1,350億円の過剰資本」という具体的な数字だ。全国に保有する自社ビルや社宅がバランスシートを重くしており、それを売却して株主に還元した方が資本効率は上がるという明確なロジックが、その後の複数のファンドを巻き込む原動力となった。
なぜアクティビストは富士ソフトを狙ったのか
そもそも、なぜ富士ソフトはアクティビストの標的になったのか。答えは同社の特殊な財務構造——「低ROE+資産含み益」の組み合わせにある。
同社の本業であるITソリューション等の「稼ぐ力」自体は決して弱くない。ところが、3DIPの分析によると、不動産の含み益などを考慮した実態ベースの修正ROEは6.6%にとどまり、IT業界平均の16.5%と大きなギャップがあった。 分母である資本が自社不動産によって肥大化し、資本効率を著しく押し下げていたのだ。企業側が資産は強みだと主張するのに対し、アクティビストは非効率な資産の保管庫になっており、見えないコストが発生していると反論。この過剰資本を巡る構造的な対立が買収を巡る根本的な火種となったのである。
