結果はCSV形式で出力できるが…

22年に運用を開始した公的年金シミュレーターの設計には、その前々年に炎上した「2000万円問題」のトラウマが垣間見えます。老後生活の不足額を平均値で単純化したことが騒動の一因になった経緯を念頭に、一人一人が自分の労働・生活状況に即して、年金受取額を試算できるオーダーメード性を強調したデザインになっていると考えられます。

今回の年金広報検討会でのプレゼンを見ても、受託事業者である日立製作所は、利用者一人一人が負担感なくアプリを操作できるデザインのノウハウを相当蓄積しているようです。

が、それだけに素朴な疑問も浮かびます。厚労省側が日立製作所にもう一声注文し、「老後に毎月必要と考える金額」を入力できる仕組みにすれば、受給見込額との差額で老後生活における毎月の予想不足額を算定できるようになるのではないか、と。

ちなみに公的年金シミュレーターの試算結果は、ワンクリックでCSV形式での出力が可能です。民間事業者が開発したアプリにそれを読み込ませることで、不足額の算出は不可能ではありません。

厚労省が所管するこの公的年金シミュレーターとは別に、金融庁は、NISA制度の啓発活動の一環として公式サイトで「つみたてシミュレーター」を運用しています。もちろん、国民にとって自分自身のライフプランと役所の縄張りは全くの無関係。公的年金、私的年金、NISAの垣根を、そして「2000万円問題」の長引くトラウマを乗り越え、信頼感が担保される公的システムの内部で「老後不足額」が一括試算できる仕組みが実現するには、まだ時間がかかりそうです。