実は繰下げ受給しないほうが良かった?

もし智恵美さんが老齢基礎年金と老齢厚生年金いずれも繰下げ受給しなかった場合はどうなるでしょうか。

その場合は50万円の老齢厚生年金を65歳から受給するため、遺族厚生年金は、120万円か50万円を引いた額、70万円を受給することになります。

夫の武史さんが亡くなる前は老齢基礎年金76万円、老齢厚生年金50万円を受給。武史さん他界後は老齢基礎年金76万円、老齢厚生年金50万円、差額支給の遺族厚生年金70万円を受給するため、合計196万円となります。

老齢基礎年金のみ繰下げ受給の場合は、70歳になるまでは老齢厚生年金50万円、70歳から武史さん他界までは老齢基礎年金108万円、老齢厚生年金50万円の合計158万円、武史さんの他界後は108万円の老齢基礎年金、老齢厚生年金50万円、差額支給の遺族厚生年金70万円の合計228万円となります。

つまり、70歳まで5年間待ったのに、老齢厚生年金の繰下げで増えた額も含めて遺族厚生年金の調整対象となるため、武史さん他界後の厚生年金の合計額は120万円で変わらないことになります。

70歳で繰下げ受給を始めた智恵美さんは「繰下げによる増額分21万円も含めて遺族厚生年金が調整されてしまうのなら、老齢厚生年金は65歳から受給し始めたほうが良かったのではないか」と気が付いたのです。

しかし、繰下げ受給を開始すると取消しはできません。

「寿命はわからない。まして自分じゃない夫の寿命だと尚更。仕方ないよね……」と思うしかなく、言われたとおりの額で受給するしかありませんでした。

繰下げ受給で自分の老齢年金の繰下げができ、長生きに備えることもできますが、配偶者の他界による遺族厚生年金との調整があります。自分だけでなく配偶者の寿命は予測できないことも多く、その点も事前に理解しておきましょう。

※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。