投資信託を選ぶ際、各販売会社が自社のサイトで公開している「売れ筋ランキング」を確認する個人投資家は多い。そのランキングを定点観測して、トレンドを追う連載。今回は、足利銀行。
足利銀行の月間売れ筋(店頭月間販売件数)ランキングの2026年2月のトップ3は前月同様にトップが「のむラップ・ファンド(積極型)」、第2位に「ゴールド・ファンド(為替ヘッジなし)」、第3位が「のむラップ・ファンド(普通型)」だった。中長期の資産形成を目的としたバランス型ファンドに加え、そのバランス型ファンドではカバーしていない「ゴールド」を加えてリスク分散を図る安定の布陣だ。そして、前月の第8位から「ニッセイ/サンダース・グローバルバリュー株式ファンド(隔月予想分配金提示型)」が第4位に、前月の第7位から「ニッセイ/サンダース・グローバルバリュー株式ファンド(資産成長型)」が第5位にジャンプアップした。
※足利銀行サイトのファンドランキング「店頭月間販売件数」に基づいて編集部作成。期間:2026年2月1日~2月28日。
https://www.wam.abic.co.jp/contents/C130129/wam3/1/pc/fundrnk.html?_com_id_product=1&_com_id_company=C130129&date=202603231655&date=202603231655&_biz_id_ranking=01&_biz_rankingseq=1&_com_id_screen=91505001&_com_id_session=02202603230326816835
投資の入り口として「のむラップ・ファンド」
足利銀行の投信売れ筋(店頭販売件数)トップに野村アセットマネジメントが設定する「のむラップ・ファンド(積極型)」が立つことが多いのは、銀行預金者が資産運用に乗り出す第1歩として望ましい姿の一つといえる。「のむラップ・ファンド」は、ファンド名のごとく主に富裕層の資産管理の方法として使われる「ラップ口座」を簡易にして一般の投資家向け公募投信としたファンドだ。世界の株式、債券、不動産(リート)を投資対象としたバランス型ファンドで、リスク水準の異なる5つのファンドで構成されている。「積極型」はもっともリスク水準が高く設定されたファンドで、当初設定である2010年3月15日から2025年12月末までの設定来の平均年率リスクは12.8%、平均年率リターンは10.1%だ。
同様に「普通型」は平均年率リスク9.8%、平均年率リターンは7.3%、そして、「保守型」は平均年率リスクが5.5%、平均年率リターンは3.7%になっている。2016年11月11日には「やや積極型」「やや保守型」が新たに設定された。「やや積極型」は平均年率リスクが10.2%、平均年率リターンが9.5%、「やや保守型」は平均年率リスクが6.4%、平均年率リターンが5.1%になっている。シリーズの中ではもっとも安定的な運用を心がけリスクとリターンの水準が低い「保守型」でも、平均年率リターンは3.7%で、国内のインフレ率(年率2%台)を上回る結果を残している。食料品やエネルギー価格などの上昇によって現金・預金(銀行の定期預金1年物の金利水準は0.275%程度)では物価上昇率に及ばない、すなわち、資産価値が目減りしてしまうという課題に資産運用の力で対処する手段の一つになっている。
また、この「のむラップ・ファンド」とともにトップ3の位置にアモーヴァ・アセットマネジメントの「ゴールド・ファンド(為替ヘッジなし)」が加わっているのは、過去1年間のリターンが87.27%、3年間で220.50%(2026年2月末時点)という爆発的な投資収益を獲得してきた魅力があるためだろう。また、同行で売れ筋の「のむラップ・ファンド」などのようなバランスファンドはもちろんだが、外国株式ファンドや国内株式ファンドとの組み合わせでも分散投資の効果は期待できる。
一方、2月のランキングで目立って存在感が高まっているのはニッセイアセットマネジメントが設定する「ニッセイ/サンダース・グローバルバリュー株式ファンド」だ。「隔月予想分配金提示型」、「資産成長型」の2本のファンドともにランキング順位を大きく上げている。このファンドは、米国・フロリダを拠点とする独立系のバリュー株の運用に特化した資産運用会社であるサンダース・キャピタル・エルエルシーが実質的に運用するファンドで、日本を除く先進国株式指数である「MSCIコクサイ・インデックス(配当込み、円換算ベース)」を上回る運用成果をめざす。設定は2023年9月6日と比較的新しいファンドだが、2026年2月末時点での1年トータルリターンが40.42%と、例えば、全世界株式指数「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」に連動をめざす代表的なインデックスファンドの「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の1年トータルリターン30.88%を上回っている。
さらに、同ファンドは「バリュー(割安)」に着眼して銘柄を選定するファンドだ。昨年までは、AI関連を中心とした「グロース(成長)」を重視した銘柄群の上昇が目立っていた。グロース株は株価が上昇したことで株価の割高感が懸念されていた。同ファンドの過去1年間のパフォーマンスがインデックスファンドを上回るパフォーマンスを残しているのは、「グロース」から「バリュー」への市場人気の転換が起こっているのかもしれない。
また、3月に入ってからのイラン紛争の勃発にともなう原油高によるインフレ高進懸念が世界の株式市場に動揺を与えているが、このような不安定な環境になると、割高感の強い銘柄群は忌避される傾向が強まるものだ。この点も割安なバリュー株には追い風になりそうだ。今後、バリュー株ファンドの人気が持続するものかどうか、ランキングの推移に注目したい。
執筆/ライター・記者 徳永 浩

