――2025年は長期債の金利上昇が話題になりましたが、今年度の発行計画では10年債の発行額は変更していません(図4)。背景を教えてください。

2025年6月、年度途中に国債発行計画を変更した時に、市場のニーズの変化を踏まえて超長期債である20年、30年、40年は発行額を落としたのですが、10年債は変更しませんでした。補正予算の財源調達に際しても、中期の2年債、5年債は増やしましたが、10年債の発行額は変えませんでした。

図4

 

10年債は、指標として大変注目を集める銘柄です。そのため、発行計画の変更にあたっては、10年債の需要についても証券会社や機関投資家の方々に十分ヒアリングを行いました。すると、金利が上がったことで銀行の本来の投資対象ゾーンである10年債には需要があるという声や、金利が安定すれば、足元の水準は銀行が預金負債の見合いとして持つ資産として十分損しない水準であるという声も聞かれました。

一方、10年債は金利リスクが比較的大きいので、ボラティリティが高いような環境下では常に慎重な対応が必要との考えも聞かれました。「足元の金利水準であれば買いたい商品ではあるが、もう少し安定するのを待ちたい」といった投資家の見方もありました。また、既にかなり金利リスクを取っている銀行では、あまり金利リスクを増やしたくないというところもあります。金利上昇傾向が続く中で株価も上がっていたため、株式の含み益がある金融機関ではそれによって債券の含み損を処理し、新たな投資がしやすくなっているところもありますが、そうではない金融機関もあります。預金獲得競争が激化する中で、ネット銀行やメガバンクに預金が流出する一方、貸出も増えているため、運用に回す資金には大きな余裕がないという金融機関の声も一部でお聞きします。

こうしたさまざまな声を総合的に踏まえると、市場の構造的なレベルで10年債のニーズが変わっているかというと、まだそこまでの変化はないと見ております。日銀のターミナルレートや金利上昇の終着点が見えづらい段階では、様子を見たいという投資家がまだ多いと考えられたため、発行計画はこのような姿になりました。