アメリカ・イスラエルによる攻撃への報復として、イランはホルムズ海峡の封鎖を宣言。湾岸諸国のエネルギー関連施設を攻撃したほか、ペルシャ湾を航行するタンカーも攻撃され、石油・LNGの輸出が停止する事態となっています。 石油の大半を中東に依存する日本も他人事ではありません。ガソリン価格の高騰のほか、エチレンなど石油製品の生産ストップの可能性も取り沙汰されています。 危険水域に迫りつつある中東情勢は、株価にどう影響するのか。つばめ投資顧問のアナリストの元村浩之さんが解説します。
※本記事は3/10につばめ投資顧問にて公開された「ホルムズ海峡封鎖で海運株は上がる?(商船三井、日本郵船、川崎汽船)」を編集の上、元村氏による特別コメントを付して掲載しております。
状況が刻一刻と変わり投資判断が難しい局面【特別コメント】
今回の中東情勢は、数日のうちに状況が大きく変化しており、投資家としても判断が難しい局面にあります。3月10日にはトランプ大統領が戦争終結の可能性を示唆する発言を行いましたが、翌11日にはホルムズ海峡への機雷敷設の可能性が報じられるなど、状況は二転三転しています。市場はこうした不確実性を織り込み、神経質な動きを続けているように見えます。
ホルムズ海峡の実質封鎖状況が持続し、LNG船や原油タンカーが長期間航行できなくなった場合、海運会社の業績は単純に恩恵を受けるとは限りません。確かに有事では運賃が上昇する傾向があります。特に初期段階ではまずスポット運賃が上昇し、状況が長期化すると長期契約の運賃にも影響が及び、業界全体の運賃水準が押し上げられるケースもあります。
ただし航路そのものが遮断されることで、輸送の稼働率が低下する可能性もあります。報道によると、ペルシャ湾周辺では日本関係の船舶が約43隻ほど待機しているとも伝えられています。船種の詳細な内訳は公表されていませんが、原油タンカーなどのタンカー船や貨物船が安全確保のため航行を見合わせているようです。こうした状況が長引くと、海運会社にとっては大きなマイナスインパクトとなるでしょう。
また、仮にタンカーが攻撃を受けて損傷・沈没した場合には、多大な損害が発生する可能性があります。ただし船舶には通常、大きな保険がかけられているため、損害のすべてが直接的なダメージとはなりません。とはいえ戦争保険料の上昇や航行リスクの高まりはコスト増要因となり、長期化すれば業界全体の負担となります。このように、現在の事態が長期化した場合、どこにどのような影響が及ぶのかをリスクとして認識しておくことが重要です。
そうした意味では、海運以外にも影響が及ぶ可能性を想定することが大切です。例えば、エネルギー価格の高騰を通じたインフレ圧力です。ホルムズ海峡は世界の原油輸送の大きな割合が通過する要衝であり、供給不安が高まれば原油やLNG価格が上昇し、電力、化学、航空、物流など多くの産業のコスト構造に影響します。特に燃料コストの比率が高い航空会社や電力会社、素材産業などは影響を受けやすい業種と言えます。
地政学リスクは短期的には株価材料として注目されがちですが、実体経済への影響は時間差で広がることが多いものです。長期投資の観点では、個別ニュースに一喜一憂するのではなく、エネルギー価格や物流といった基礎的な構造がどう変化するのかを冷静に見極めることが重要ではないかと思います。
