ホルムズ海峡封鎖で海運株は上がる?【レポート本編】
今回は、「地政学リスクと海運株」という、現在非常に注目度の高いテーマを深掘りします。
現在、ニュースでも報じられている通り、イランに対するイスラエルおよび米国の軍事衝突を端緒として、中東情勢が極めて緊迫化しています。
この事態を受け、イラン側は世界的なエネルギーの要衝であるホルムズ海峡の封鎖を宣言し、3月12日の午前中時点で「事実上の封鎖状態」に陥っています。
こうした有事の際、株式市場では「海上運賃が上昇し、海運企業の業績に多大な恩恵をもたらすのではないか」という思惑が強く働きます。
しかし、その恩恵が実際にどれほどの規模なのか、またどの程度の時間軸で発生するのかを正確に測ることは容易ではありません。
海運業界の構造や大手3社のビジネスモデルを徹底調査し、現在の株価水準が妥当なのか、プロの視点で分析していきます。
ホルムズ海峡とは何か
投資家としてまず理解すべきは、問題となっているホルムズ海峡の地理的重要性と、対立の歴史的背景です。
ホルムズ海峡は、アラブ首長国連邦(UAE)とイランの間に位置し、海が非常に狭まっている場所にあります。
なぜここまでの軍事攻撃に発展したのかと言えば、根底にはイランと西側諸国(特に米国やイスラエル)との長年にわたる深刻な対立構造が存在します。
これまでもイランの核開発を巡って米国が厳しい制裁を課すなどの経緯がありましたが、今回の衝突を受け、イラン側は「自分たちが攻撃されるのであれば、世界のエネルギーの通り道であるここを通らせない」という強硬な姿勢、すなわち海峡封鎖に踏み切ったのです。
ホルムズ海峡封鎖がもたらすエネルギー供給の断絶
この海域が封鎖されることによる影響は、想像を絶する規模となります。
2024年ベースの統計によれば、世界全体の原油消費量の約20%に相当する量がこのホルムズ海峡を通過しています。
出典:国土交通省「数字で見る海事2025」
主要な産油国であるサウジアラビア、イラク、イラン、クウェートなどのエネルギーがこの「喉元」を通って世界へ供給されているのです。
特に日本への影響は甚大です。
日本の原油輸入の約9割は中東に依存しており、サウジアラビア、UAE、クウェート、カタールといった国々からの供給が止まることは、日本のエネルギー安保にとって死活問題となります。
さらに、LNG(液化天然ガス)についても、カタールが世界全体の供給量の約2割を占めています。
LNGは原油とは異なり、超低温での保存が必要で長期間の貯蔵が難しいため、供給がストップした場合の影響は原油よりも早期に表面化する可能性があります。

