新NISAの口座数は2052万にのぼり、2025年末には残高29.8兆円を突破。もはや資産形成に欠かせない存在となった同制度だが、実際のところ、世の投資家たちはどんな使い方をしているのだろうか。2026年上半期の最新データを紐解くと、口座の稼働率や人気ファンドの傾向など、意外な利用実態が浮かび上がってきた。
本稿では冒頭にモーニングスター・ジャパン マネジャー・リサーチ部長 元利大輔氏への特別インタビューを添え、同氏によるモーニングスター掲載のレポート『NISA概要レポート2026年上半期 投信残高200兆円突破、NISA利用はなお発展途上』を転載してお届けする。
「NISA口座を開設して放置」の背景にある業界事情
――レポートによると、NISA口座2052万のうち2025年中の稼働口座は約6割で、約4割は未稼働とのことです。口座開設をしたのに買い付けに至らない原因として、どのようなことが考えられますか。
NISA口座は一人一金融機関にしか開設できないため、各社は口座開設キャンペーンを積極的に展開してきました。一方、NISAでの投資金額は、従来の対面チャネルの顧客層に比べると小さくなりがちで、販売員やアドバイザーによる積極的なフォローの対象になりにくいです。結果として、投資初心者の方は数多くの商品の中から自分に合ったものを選ぶサポートを得にくく、何を買えばよいか分からないまま、口座が未稼働の状態にとどまってしまうケースが多いのではと考えます。
――NISA利用率の世代差を指摘されています。高齢層ほど成⾧投資枠の利用・残高シェアが高まっているのはなぜでしょうか。
成長投資枠には年間240万円という非課税枠があり、これを一括投資で活用したいというニーズが背景にあると考えています。高齢層ほど手元資金に余裕があるため、つみたてによる資産形成というより、すでにある資金を非課税で運用するために成長投資枠を使われているとみられます。
「毎月分配型」は若年層に不要? 商品性を理解して購入を
――純資金流入額上位30ファンド(2026 年上半期)には、NISA対象外の「毎月決算型」のファンドが複数ランクインしています。毎月分配金が得られるファンドは高齢層だけでなく20代などの若年層からも支持が集まっているようですが、この現状をどのように捉えていますか。
若年層が毎月分配型を支持している点は、正直意外です。分配金利回りが年率10%台後半に達するファンドもあり、一見魅力的に映りますが、本来は運用しながら資産を取り崩していく高齢層向けの商品です。若年層の方が毎月分配金を受け取っても、それをどのように使うのでしょうか。高い分配金利回りが強調されるなかで、若年層が商品性を正しく理解できているかという点は懸念しています。
――資産クラス別のデータでは、債券型・REIT型からの資金流出が続いています。投資家に分散の意識が浸透する中で、債券型・REIT型への投資が進まない背景をどう分析されていますか。
足元では株式市場が好調なため、債券やREITはパフォーマンス面での魅力が相対的に薄いと見られていることが一因だと考えています。株式型では高いリターンという成功体験を得やすい一方、債券型やREIT型を組み入れた分散投資の成功体験はまだ得にくい状況です。ただ、パフォーマンスだけでなく、「卵を一つの籠に盛るな」というリスク管理の観点からも、株式型以外のファンドを検討することも重要ではないでしょうか。
――レポートでは2027年開始予定の「こどもNISA」への言及もありました。NISAは今後、どのような変化や利用の広がりが予測されるでしょうか。
現時点では、証券会社、特にオンラインチャネルを通じたNISAの広がりが大きく、この流れが変わることは想定しづらいと考えています。一方で「こどもNISA」は、金融機関に目先の収益をもたらすものではありませんが、顧客の囲い込みという点では重要になります。地方銀行などが「こどもNISA」にどのように取り組んでいくかは、今後注目したいポイントです。
――2026年上半期は日米の株高が見られた一方で、地政学的リスク等による一時的な相場の急落などもありました。下半期以降、個人投資家が市場環境と向き合う上で大切にすべき投資スタンスや心構えがあればお聞かせください。
やはり「長期・分散投資」の姿勢が重要だと考えています。市場の変動性が高まるなかでも、短期的な値動きに一喜一憂せず投資を続けていくこと、そして周囲の動きに流されず、ご自身にとって本当に必要な投資は何かを見極めていただきたいと思います。
