新興国市場ならではの特殊要因に翻弄されることも

――イレギュラーなこととは具体的にはどんな事柄でしょうか。

樫村 マーケットが突然クローズしてしまうことがあります。MSCIエマージング指数には、台湾やフィリピンが組み込まれていますが、例年8月から秋にかけて、大きな台風が発生すると株式市場が閉鎖になるケースもまれに発生します。そうしたタイミングに、台湾市場やフィリピン市場で株式を売却していると、資金の受取が遅延してしまいます。そうするとファンド内の資金繰りに影響が出てきます。資金繰りに余裕を持たせるためには、現金比率を高めることが必要ですが、あまり現金を持ちすぎると今度は指数との連動性が低下し精緻な運用ができなくなります。そのため、資金繰りに余裕を持たせながら、指数との乖離を最小化するといったバランス調整が、運用者の腕の見せどころです。

――気象情報も注視しなければならないんですね。

樫村 このケースは季節性があるので、まだ、ある程度は予測できるのですが、以前、2022年にサッカーのワールドカップでサウジアラビアがアルゼンチンに勝利したとき、その翌日が急遽祝日となって、株式市場がストップしたことがありました。世界のさまざまなイベントにも気を配らなければならないなと痛感したエピソードです。

そして、資金繰りという部分では、指数採用銘柄の入れ替え時も非常に気を使います。オルカンの投資対象国は47カ国あり、国によって株式の約定から決済(着金)までのタイミングが違っていたり、市場慣行による独自の休日があるので、たとえ先進国であっても気を抜けません。また、オルカンは運用残高が大きいので、私たちの売買が市場そのものに影響を及ぼすことがあります。そういったマーケットインパクトを極力抑えるために、銘柄ごとに売買の株数を調整したり、注文形態を引け値にするだけでなく分散させたり、といった工夫をしています。

――運用がシステムと人の両輪で回っている、ということですね。よく、オルカンの比喩として、〝世界経済の箱庭”などと言われますけど、ポートフォリオ自体がまさに世界中で起きているニュースの縮図であり、それに機敏に対応するスタンスがトレーディングにも求められるわけですね。ありがとうございました。