要旨

〇日本のエンゲル係数は2025年に28.6%(二人以上世帯)に達し、生活水準の低下を示した。この背景には、米類などの食料品価格が他の物価に比べて相対的に上昇したことや、社会保険料等の非消費支出の増加による可処分所得の減少がある。一方で、株価上昇による資産効果やデフレマインドの緩和が節約志向を抑え、消費性向が上昇したことが、係数のさらなる悪化を一定程度抑制している。

〇現在の物価高は、需要拡大による「良い物価上昇」ではなく、原材料費高騰による「コスト・プッシュ型」の「悪い物価上昇」の側面が大きい。賃金上昇が物価高に追いつかないため、家計は消費を抑制してきた。特に、所得に占める食料・エネルギー費といった必需品の割合が高い低所得者層ほど負担が重く、富裕層との実質的な生活格差が拡大している。

〇国内需要の不足(マイナスの需給ギャップ)が続いており、政府・日銀が掲げる「良い物価上昇」の好循環には至っていない。インフレ率の鈍化により、目先実質賃金がプラスに転じる可能性はあるものの、安定的な目標達成とは依然言い難い状況である。そのため、日銀の金融政策の正常化には、慎重な判断が求められる。