これまでの物価上昇は「悪い物価上昇」
そもそも、物価上昇には「良い物価上昇」と「悪い物価上昇」があるとされる。「良い物価上昇」とは、国内需要の拡大(デマンド・プル)によって物価が上昇し、これが企業収益の増加を通じて賃金の上昇をもたらし、更に国内需要が拡大するという好循環を生み出す。しかし、ここ元の物価上昇は食料・エネルギーの値上げ(コスト・プッシュ)によりもたらされている(図表3)。そして、国内需要の拡大を伴わない物価上昇により、家計は節約を通じて支出を一段と委縮させてきた。その結果、賃金上昇が物価上昇に追い付かずにエンゲル係数が上昇してきたことからすれば、少なくともこれまでは「悪い物価上昇」だったといえるだろう。
生活格差をもたらす食料・エネルギー価格の上昇
ここで重要なのは、食料・エネルギー価格の上昇が、生活格差の拡大をもたらすことである。食料・エネルギーといえば、低所得であるほど消費支出に占める比重が高く、高所得であるほど比重が低くなる傾向があるためだ。
事実、総務省「家計調査」によれば、可処分所得に占める食料・エネルギーの割合は、年収最上位20%の世帯が18.7%なのに対して、年収最下位20%の世帯では27.9%である(図表4)。従って、全体の物価に比して食料・エネルギーの価格が上昇すると、特に低所得者層を中心に購入価格上昇を通じて負担感が高まり、購買力を抑えることになる。そして、低所得者層の実質購買力が一段と低下し、富裕層との間の実質的な生活格差はさらに拡大する。