勝手に決まるパーティー

「でも大変じゃない?」と、1人のママが小声で結衣に近づく。いつも控えめに話しかけてくれる佐伯さんだ。

「新しい家なら、人呼ぶの負担にならない? 準備とか片付けとかも……」

「い、いえ……そういうのは大丈夫、多分」

本当は、大丈夫ではない。ただ、「空気が読めないママ」というレッテルを貼られるリスクを考えると、ここでストレートに「嫌だ」とは言えなかった。

「ほんと? さっすが、結衣さん!」

聖来がすかさず声を上げる。

「じゃあ、結衣さんちでクリスマスパーティー、決まりでいい?」

「賛成ー」

「助かるー」

次々と上がる声に、結衣の制止は飲み込まれていった。

心春が遠くから「ママー」と手を振っている。園舎の壁に貼られたサンタのポスターが風に揺れる。

悪目立ちしたくない。波を立てたくない。昔からそうだった。

「……ちょっと、主人に相談してみるね」

自分でも驚くほど小さな声で、結衣はそう告げた。しかし満足げに笑っている聖来は日時や持ち寄りの話をどんどん決めていく。

その輪の端で、結衣はただ頷き続けるしかなかった。

新しいマンションの白い壁と、まだ一度も来客に使ったことのないリビングが頭に浮かぶ。そこで子どもたちが走り回る光景を想像して、気が重くなる。

そのとき隣で、佐伯さんが小さく「何かあったら手伝うからね」とささやいた。彼女の一言だけが、冷え始めた空気の中で、結衣の足元をかろうじて支えていた。